しがみつく。
勝利へ、チームの、この海常高校のベストチームでの勝利へと。
痛む膝を見抜かれて一旦下げられたけど、そんなのどうでもいいくらいに勝ちたかった。
先輩たちと一緒に拳を合わせて、やったなって。帝光では出来なかったことをしたい。
仲間っていいなって初めて思った。
黒子っちと同時にコートへ戻る。
ああ、これだ。この感じだ。
青峰っちに挑戦したときもショーゴ君に勝った時も。
それよりも強くある、海常としての黄瀬涼太が生きる瞬間。
「俺、このチーム好きなんスもん」
火神っちの天性の才能にだって、黒子っちの特性にだって負けない。
戦ってるのは俺ひとりじゃない。
『空中への一歩はすごく難しいんだよ』
名前の声が蘇る。
声も枯れたし綺麗じゃなくなったけど、それでももがいて汗まみれで地べたを這いつくばるのが今のベストの黄瀬涼太だから。
「──っらぁ!」
思いっきりダンク決めて、完全の模倣でみんなの技をきめてキャプテンや先輩たちとハイタッチして。
そうだ、これなんだ、これなんだよ名前。
負けて立てなくなって泣く俺に肩を貸してくれる先輩も、俺たちに見せないで隠れて泣く笠松先輩も。
それがみんな俺を作る一部だった。
空っぽだったけど、空っぽだと思い込んでただけだった。
手を伸ばせば七色のみんなにだって、今なら届く。
「涼太」
「…名前」
「おつかれ」
「はは、負けたけど。スッキリした…」
「いい試合だったじゃん」
「そ、かな…名前が言ってたこと、俺、やっとちゃんとわかったかも。いつも気づくのが遅すぎるんスね、俺は…」
すっかり真っ暗になって夜風にふかれながら、手のひらを見つめる。
試合後、外に出てみれば案の定名前がいつものように笑って俺を呼んでいた。
そのまま会場の壁に寄りかかって話す。
「それがその瞬間の涼太のベストなんだよ。遅かったんじゃなくて、今気づくのが涼太にとってのベストなタイミングなの」
先に気づいたって、欲しかったものはきっと手に入らなかったでしょう?
確かにそうだ。
俺が今このタイミングじゃなくて、もっと先にこの気持ちになっていたとしても青峰っちを納得させることなんて出来なかったし、誠凛ともこんなに真剣に試合を出来なかったかもしれない。
「命はふわふわ頼りないものだって言ったでしょ?そういうことだよ。そんなに考え込まなくていいんだよ。だんだん、自分の大切なものが増えてからやっと重みがつくんだから」
「それじゃ、名前もその大切な重みのひとつだよ」
そう言えば、彼女はハッと目を瞬かせて驚く。
「だって名前が言ってくれたんじゃん。俺のコト、好きだって」
恥ずかしいのを隠すために彼女を抱き寄せて、低い位置にある肩に顔を寄せる。
安心する匂い。
もう取り繕う必要はないのだと、伝えてくれるぬくもり。
「…じゃあ、私たちは恋人同士、なのかな?」
「それ以外に何があるんスか」
「はははっ、確かにそうだね。そっか、涼太と私は恋人なんだ」
「そうだよ。最初で最後の恋人で、次は婚約者になって、その次はお嫁さんと旦那さん」
「気が早いなあ涼太は」
とんとん、と背中が叩かれて名前を離して、しっかり向き合う。
「綺麗に鳴かなくてもそのままでいいんだよ。私のカナリア」
誰の命にも重みはない。
だから誰がどうしようとその人の勝手だし、望むなら好きにさせなければいけない。
ただ、俺は名前がいて、今はもう前より少し重みが増えたから。
もう飛ぶことはない。
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