四月某日。
中学最後の年ということもあり、すぐに各クラスから卒業アルバム委員が選出された。
まずは手始めに部活動ごとの質疑応答ページから作成に入るらしい。



「ということで、一問一答の紙がきたよ」
「わー!」
「えーめんどー」
「げえ」


予想通り、乗り気なのは涼太のみ。敦と大輝はめんどくさいと体現し、真太郎とテツヤは特に反応なし。
これはどう答えさせるか僕の腕がなるな。


「各自必ず応えてもらうよ、これは強制だしね」
「どうしましょう、僕本当にそういうの苦手です…」
「だぁーいじょうぶっスよ!雑誌の企画で質問コーナーは慣れてるから、黒子っちのは俺が一緒に考えるっス!」
「死ね」
「黄瀬ちんうざぁー」
「ありがたいお言葉ですが結構です」
「涼太、黙ろうか」
「赤司っちまで!?」


きゃんきゃん煩い、この駄犬め。
涙目で吠えてもどうせすぐころりと機嫌がなおるから放っておく。
敦はバリバリバリバリお菓子を開けてばかりいるし、真太郎は早く部活をしたくて苛々してきている。
最早この収拾のつかない事態に僕が苛々してきた。


「みんな、一回お口にチャックだよ」
「へ…」
「口にチャックなんてないからできないんだけどー」
「言葉の綾だ」
「(赤司くん…あなたはどこの幼稚園の先生ですか…)」
「何と言おうとこれはもう卒アル委員から依頼されてるんだ、是が非でも答えを捻り出せ」
「「は、はひ」」


一番面倒のかかると思っていた大輝と涼太はこれで良し。あとの奴らも、のらりくらりと答えるだろう。


「じゃあいくよ。まず、趣味から」
「はいはーい!カラオケー!」
「グラビア観賞」
「んー寝ることー?」
「…それは趣味とは言わないのだよ」
「じゃあ駄菓子屋巡り〜」
「えっと…僕は読書、ですかね」
「涼太がカラオケ、大輝がグラビア観賞に敦が駄菓子屋巡りだね……よし。真太郎は?」
「あの。赤司くん、僕の書き忘れてます」
「あ。忘れてたよ、すまないね」
「……………」
「で、真太郎は?」
「(さすが赤司っち鋼のメンタル…!)」
「(いやいや赤司、お前スルーしてっけどテツめちゃめちゃジト目で見てんぞ!)」
「俺は将棋とクラシックなのだよ」
「将棋とクラシック…と。で僕は…そうだな、ボードゲームにしておこう。次は好きな食べ物」
「おしるこ」
「(早!!)オニオングラタンスープ」
「長い。縮めろ」
「無茶ぶり!!!!」
「テリヤキバーガー」
「お前はジャンクフードを食べ過ぎだ」
「何これ赤司のダメ出しタイムなの?」
「バニラシェイク」
「そんなだからひよっこなんだよテツヤ」
「………赤司くんに言われたくないです…」
「「(なんてチャレンジャー!!)」」
「俺はねーお菓子ー」
「その食生活でここまで成長したお前が憎いよ敦」
「「(もはや個人的な恨みなんだけど!)」」
「ちなみに僕は湯豆腐だからね。みんな覚えておくといい」
「「(なんでだよ!)」」


六人分きいてまとめていく。
質問内容だけ箇条書きにされたものを委員から渡されたが、こちらは人数もそこそこいるしこの書式では書きにくい。提出するとき先生に進言しておくか。


「次は座右の銘なんだけど……これはめんどくさいからあとで各自書いておいて」
「「(え!?三つ目で放棄!?)」」
「赤ちんもめんどくさがりだねー」
「違うぞ敦。これは時間の短縮だ、有効活用と言ってくれ。あとはそうだな…血液型などの個人情報は適当に書いておけばいいだろう」
「よくないと思うっスけど…」
「俺B型だからな赤司」
「よし大輝はA型にしよう」
「だからなんで!!!」
「なんでもいいから早く次にいくのだよ」


今日のラッキーアイテムであるみたらし団子三本パックを持ちながら真太郎が急かす。
真太郎がラッキーアイテムの食べ物を持ち歩いているせいで、今日一日敦はちらちらきょろきょろとその手元を見ている。敦の食い意地はどうにかならないのか。


「ミドチンー。やっぱりそれ……」
「やらん」
「なんでぇー!?てゆーか最後まで言ってねーし!」
「これは食用ではないのだよ!今日一日の俺の運気を補正するためのものであって、決してお前を餌付けするためではない!」
「食用だもん!つーか世界のお菓子は俺の胃袋に入るために作られてるからミドチンのみたらし団子も俺のなの!」
「いつからお前はジャイアンになったのだよ!」


君はそのみたらし団子に何を期待しているんだい。みたらし団子がたまたま今日君のラッキーアイテムだっただけなのであって本来は誰がどう見ても食用でしかない。
むしろ純粋にラッキーアイテムとして使用する人間なんてこの世で真太郎しかいないだろうな。


「あのみたらし団子、今日が終わったらどうするんスかね…」
「あー?んなもん、食うんじゃねーの」
「でも緑間くんなら、一日俺の運気を補正してくれたから力が宿っている。このみたらし団子はいつかまたみたらし団子がラッキーアイテムになったときのためにとっておくのだよ…とか言い出しそうですね」
「「ありそう」」


みたらし団子は腐るぞ真太郎。
敦が半泣きになりながら真太郎に訴えているが、これはどこまでいっても平行線だろう。
無視をして続ける。



「次は好きな女性のタイプだ」
「巨乳」
「はい青峰くん最低ですね」
「なんでだよ!」
「大輝は巨乳が好み…と。まぁ大輝が女性から人気がなくなろうと僕に関係ないからね。ただ今ので大輝は世の中の女性を敵に回したよ」
「だからなんでだよ!撤回するつもりはねーけど何その悪意に満ちた言い方!」
「テツヤは?」
「無視かよ!」
「えっと、僕は……その、優しい人、です。そういう赤司くんは?」
「僕かい?僕は品のある女性かな」
「二人ともそれっぽい答えっスねー」
「そうですか?」
「誰しも自分とかけ離れすぎた人間を好みにあげることはないだろう」
「まぁそーっスけど。俺は束縛しない子かな〜。仕事柄、他のファンの子たちに冷たくとかはできないんで」
「死ね」
「死ね」
「死ね」
「爆ぜてください」
「ヒドイ!なんで俺ばっかこんな目に…!」


涼太を罵らないのは真太郎だけだった。


「俺はねー。背ぇ高い子だな〜」
「(紫原っちもタイプとかあるんだ…)」
「(お菓子が恋人とかじゃねーのか)」
「(すでにまいう棒が彼女ポジションかと思ってました)」
「背の高い子だね。あとは真太郎だけだよ」


僕がそう言えば、みんなの視線が一斉に真太郎へと向かう。
こういう話題を振るどころかノリもしない真太郎がどう答えるかみんなも気になるんだろう。
ちなみに僕とテツヤと敦は自分から振りはしないが聞かれれば、特に思う人がいるわけでもないからそれなりに答える。頑なに拒むのは真太郎だけだ。
好奇心に満ち溢れた目をいくつも向けられ、気まずそうに視線を窓へと動かした。


「で?どうなんだよ」
「どんな子が好みなんスか?…あ、幼馴染の七瀬さんとか?」
「、っ!」
「お?ドンピシャじゃねーのこれは」
「七瀬さんて、僕と同じクラスの…?」
「ああ、テツヤは同じクラスだったね」
「はい。いつも僕に気がついてくれてとても優しい方です」
「あいつ男子の中でも人気でよく話に出てくるよなー巨乳ではないけど可愛いし」
「あ、青峰っちのところも?確かに可愛いしなんかこう、雰囲気も綺麗っスよね」
「俺のクラスでもよく聞くよ〜」
「色白で綺麗な方だと思ってましたが…本当に人気なんですね。そして青峰くん死んでください」
「テツ…!!」
「彼女は落ち着いているからね。高嶺の花なんだろ。な、真太郎?」
「なっ、俺は別に…!」


顔を真っ赤にして狼狽えている。
彼がこうも動揺して取り乱すことはめずらしいが、何分男ゆえにそんな反応をされても可愛くともなんともない。むしろいつもの真太郎を知っているこちらとしては多少、いやかなり気持ち悪い。


「もーミドチンは七瀬さんが好きなんでしょー?ならそれでいーじゃん」
「勝手に決めるな!」
「じゃあ違うんスか?」
「そっ、れは…」
「赤司ー。緑間のタイプは七瀬だとよー」
「わかった」
「おい赤司!待つのだよ!」
「んだよしつけーなー。嫌いじゃないならいいだろー?」
「そーゆーこっちゃないのだよ!」
「じゃあどーゆーこっちゃなのー。うじうじしてんのうざいんだけどー」


茹で蛸のような顔で立ち上がる真太郎。これはこれは。三年ほど一緒にいたが初めて見るリアクションに表情だ。
苦しそうに、悲しそうにしながらも愛しくて、今きっと彼は彼女を思い浮かべているのであろう、そんな表情。


「…直接名前を出したら、遙に迷惑がかかる。だから適当に当たり障りないことを書くのだよ」
「当たり障りないことー?」
「適当でいーってんなら俺らが考えてやるよ」
「な、おいお前ら、」
「緑間っちは普段こういうこと話さないからなー。意外性があるのがいいっスよね」
「緑間くんは本当に七瀬さんが大切なんですね。〜な人とかだと探られたりしないこともないので、年齢で例えてみたらどうです?」
「お!それいいな!年下好きにするか?」
「ミドチンはどっちかって言ったら年上じゃな〜い?」
「じゃあ真太郎のタイプは年上ね」
「お前らいい加減にしろっ!!」


こうして真太郎は卒業まで年上好きを公言させられることになった。
これが七瀬さんの耳に入らないことを願うが、アルバムを見ないことなどないだろうし真太郎の即死は免れないなと頭の片隅で思った。




「……っくしゅ!」
「遙、風邪?」
「んんー…鼻がむずむずする。風邪かなぁ」



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