私の身に起こっていることもまた、未解明のものの1つだと思う。
不思議な世界
私には、前世の記憶がある。
とうの昔にテレビで『前世の記憶がたる子供たち』みたいなものを見たことがあるけども、まさにそれが今自分に起こっているのだ。しかもそのとうの昔に見たというその記憶自体も前世の自分が見たものであって、今の私ではない。
目が覚めたら知らない部屋で寝ていた。生活感がそこそこあるマンションの一部屋のベッドの上で。ここは何処だろうと思っているはずなのに、身体は勝手に洗面所に向かい、実際、顔洗ってトイレ行ったらご飯作らなきゃ、なんて頭の中では考え事をしている。自分が自分じゃないみたいで気持ちが悪かった。
そして鏡に写る自分を見て驚愕した。
明らかに若返っていた。心なしか背も小さい。慌てて部屋中を探索する。すると、見慣れないスクールバッグと"立海大附属高等学校"という生徒手帳があり、クローゼットには制服もあった。立海という文字を見て、ピンとこないほど非オタではない。この時すでに頭がパンク寸前だった。
とりあえず一息着こうとソファに腰かけると、テーブルの上には『オサムちゃんに電話』というメモ書き。もうここまで来たら確信犯としか思えなかった。
("立海"に、"オサムちゃん"……)
バカだと自分でも思ったが、私はトリップしたんだと仮定した、というかほぼ確信した。
どうしよう、なんて呑気に思っていると、本棚の真ん中に一冊のノートがあり、出来心で見てみると、1ページ目から、私のありとあらゆる個人情報がぎっしりと記載されていた。
そして、1ヶ月前に、事故に遭って数週間寝たきり状態だったことが原因で、記憶が曖昧であることも書いてあった。
そこで私は思い出した。ここで暮らしていた"私"の記憶全てを。言うならば、今私は2つの人格を持っている──といってもほとんど性格は変わらないけど──ことになる。
悩んでいても仕方がない。
特にこれと言ってこちらに不利益になるようなことも無いだろうしいいか、とすんなりこの状況を受け入れ、その時から私は前世の記憶を思い出した少女(笑)として生きることになった。
▽ ▽ ▽
その後の私の生活は目紛しいものだった。
まず、メモにあった"オサムちゃん"とは、本当にあの大阪の教師で、彼は私の叔父さん。因みに両親はプロの声楽歌手らしく、世界各地を飛び回っている。その間の私の代理保護者が叔父である渡辺オサムだという。確かに思い出した記憶の中でも彼に会いに、大阪に行った自分がいた。
……正直、興奮した。リアルオサムちゃん!と胸が熱くなったが、必死にそれを抑えた。
有難いことに、立海大付属高等学校に編入するために手続きはもうすでに終えてあるらしく、登校日は明後日だと言われた。
冷静すぎる自分と、編入日が明後日だと焦る自分に押しつぶされた。
(明後日までに何とか出来ることしなきゃ……。けど、出来ることなんてないな)