十年経ってすっかり大きくなったルーメンは、見晴らしの良い場所からゆっくりと昇る太陽を見つめていた。自分に付けられた名前の意味を理解しているかは誰にも分からないことではあったが、ルーメンの頭を撫でるナマエは世界にようやく戻ってきた光をじっと見つめていた。ルーメンとは、光という意味を持つ言葉だ。生まれてからこれまで一度も見たことのなかった、本物の光をルーメンはどう思っただろうか。
ノクトたちを見送ってから、何日過ぎたのだろうか。突然差した一縷の光にルーメンが驚いたことをナマエはよく覚えている。初めての光は、まるで真っ白な世界を鮮やかに彩るように見えたのではないだろうか。あたたかい、それはこの世界に生きる全ての生き物たちに影響を与えるのだ。シガイは消え去り、凶暴だった魔物たちも昔の姿へと戻ってきていた。命あるもの、皆が空を見上げていることだろう。



「ノクティス様、ルナフレーナ様、世界に光が満ちていますよ」



ナマエが語りかけた先がルーメンではないことは確かだった。風に運ばれた言葉は、やがて消えてなくなっていく。伝えたい相手に届くといいな、とナマエはルーメンをぎゅっと抱きしめる。ノクティス様がチョコボポストでこうやっていたのも懐かしい、と呟く。ルナフレーナ様の力強くもあり、優しい言葉は今でも彼女の、世界中の人々の耳に残っていることだろう。
世界が明るいことを当たり前のように感じていたが、それは世界を守る存在がいつの時代も生きていたからである。光を失って、初めて普通が普通でないことを人間は知ったのだ。だからこそ、当たり前の日常を大切にしなくてはならない。
ルーメンがひと鳴きして、光に背を向ける。尾羽の隙間から差し込む光は、ルーメンの行く先を照らす。世界の一日が、また始まりを告げたのだ。ナマエが歩き出せば。ルーメンもその後をついていく。丘を下っていく一人と一匹の、足音がリズミカルに響く。そして、ナマエはルーメンと一緒にいつまでも、帰りを待つのだ。



「みんなが帰ってきてくれるの、楽しみね」



ぽつり、呟かれた言葉だったが、ナマエは隣で羽根を震わせるルーメンの姿を見て、彼のことを思い出す。最後に見た彼の背中は、学生時代よりも何倍も逞しく、その背中について行きたいと素直に思えるほどだった。涙を溜めて、ぼやけていく視界の中で、彼の背中を見たこともあったが、ナマエの心に焼きついて離れないのは、数日前の彼だ。ルーメン、と声をかけた彼女が向かう先は、眩しい程に煌めいていて、ナマエが通る道ができあがっている。ルーメンの甲高い鳴き声は広い草原によく響いた。



「はやく、逢いたいね」
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