久しぶりにみたユーリの髪の毛は結われていた。前に会ったときは、髪を結んではいなかったのに。サラサラと流れるような髪がスケートの際に靡くのを見るのも好きだけれど、これはこれで新しいユーリかもしれない。何かを脱したような表情が印象的で、髪型も意気込みを示すように見えた。様々な刺激がユーリ自身を変えていったのかもしれない。近くにいたわけではないわたしが、全てを理解するなんてことは到底無理な話だけれど、最後に見たユーリとはまるで別人なのはよく分かる。



「ユーリ」
「ん、ナマエか」
「変わったね」
「ふん」



変わらないのが良い意味なのか、悪い意味なのか、ユーリの表情と言葉の調子から読み取ることはできなかったけれど、わたしにとってそれは特に問題ではなかった。エンターテイナーのように人前に出る仕事をやっているわけではなく、顔を出すことのない地味な仕事なのだから自分がどんな人間であろうが、関係ない。それに人間が変わるということに対して、定義付けが為されているわけではない。直感で判断しているだけだろう。現に、わたしだってユーリが変わったというのは外見もそうだし、彼が別の人間と接する中で感じただけなのだ。わたしではない他人から見れば、ユーリは特に変わってないと言われるかもしれないし。



「何かあった?」
「別に」
「そう。わたしも別にない」
「言いたいことはそれだけか?」
「……頑張って」



隣を歩いていくユーリが同じ歳だなんて信じたくなかった。一方は世界で活躍するような人間で、一方は地味な仕事を請け負って毎日同じことを繰り返す面白みのない生活をする人間。天と地ほどの差があるように思う。人間に価値を付けることはあまりよくないことだと個人的に思っているけれど、これだけの違いを見せつけられると、わたしという人間の価値は何だろうと考えてしまう。ユーリは世界から求められる逸材であり、注目される存在なのだ。わたしがいなくなったところで、気にかけてくれるのは世界規模ではない。これだけでも、ユーリとの違いがよく分かる。



「ナマエ」
「え?」
「……辛気臭い顔すんな。他人と比べることはいつも必要じゃねえんだ」



ユーリの不思議なところは、何も見てなさそう、何も感じてなさそうに見えて、的確な言葉を投げかけてくるところだ。きっと、誰よりも何かを見つめて追いかけて、心で感じているからなのだと思う。わたしが知らないところで努力を重ねていて、それが今開花しているのだ。わたしも、彼に負けないように頑張らなきゃ。見えないからといって、努力を怠っていいわけじゃない。わたしがやっていることは人には見えない成果かもしれないけれど、自分の中に確実に残る物がある。もしかしたら、世界中の誰かひとりは見ていてくれるのかもしれない。例えば、目の前の彼、とか。

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