*女の子≠プロデューサー



わたしの目の前にいるこの人はお酒に弱い。いつも二杯飲んだところでギブアップのくせに、わたしの家に来る時は大量にお酒を買い込んでくる。おかげで、家の冷蔵庫は飲みきれなかった分のお酒が溜まっていくのだ。一人暮らし用の冷蔵庫だから、それ程大きい物ではない。量はあまり入らないのだ。毎回注意するのに、輝は本当に分かっているのだろうか。返事だけはとても良いのだけれど、それに見合った行動はとってくれない。当の本人はというと、ソファーにひっくり返って大口開けて寝ている。この男はアイドルなのかと疑われても仕方ない気もする。いつも彼を応援してくれているファンには絶対見せられない姿だ。きっと、彼のグループメンバーは知っているだろうけれど。
連絡もなしに突然フラフラとやって来てはお酒を飲みながら、他愛もない話をして、最後はお決まりのようにソファーで朝まで寝る。突拍子もない行動のようだが、輝は必ず決まって次の日が休みの時、わたしの家へ来る。その様子を見ると、やっぱりアイドルとして仕事をしっかりする誠実な人だと思えるわけだけど。本当に何も考えていないのであれば、計画性に欠けているだろう。
童顔を気にして生やしている髭をそっとひと撫ですると、わたしの指に独特の感触が広がる。すぐに例えが思いつかないけれど、日常生活の中ではなかなか遭遇しない肌触りなのだ。あーあ、いい歳して涎なんか垂らしちゃって。まるで子どもみたい。口の端をティッシュで拭いながら、わたしは小さく名前を呼ぶ。



「輝」
「……んー」
「すき」



わたしがいるこの場所が輝にとって安心できる、ひとつの場所なら嬉しいかな。さて、熟睡したアイドル様が風邪を引かないようにいつもの毛布でも準備しよう。テーブルに乱雑に置かれたお酒の缶や、料理のお皿を片付けるのは後回しだ。



Title:誰そ彼

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