*女の子≠プロデューサー
*「ピンクの花弁は砂糖に浸して」のつづき



カーテンの隙間から差し込む光がわたしの閉じた瞼をノックするように煌く。もう、朝が来たらしい。この一週間は本当にめまぐるしいもので、あっという間に過ぎていった。朝が来るのは紛れもなく、日常茶飯事のことだというのに今までとは違う朝だと感じているのは、隣のあたたかい存在を認識しているからだろう。わたしと、彼の指にはお揃いの指輪が光っているのだ。隣で眠ったことは幾度となく繰り返されてきたのに、お互いの指に光るそれが特別なことだと主張している。朝方はまだひんやりしていて肌寒い。道夫さんは毛布にくるまっていて、まだ夢の中らしい。もういい歳の大人だというのに、その姿は可愛らしくて、思わずクスクスと笑ってしまう。こんな一面を知っているのは、わたしだけかもしれない。
先にベッドを抜け出したわたしは、道夫さんを起こさないようにと抜き足、差し足、忍び足とばかりにクローゼットに向かう。今日は彼が一日オフだというので、午前中から出掛けることになっていたのだ。クローゼットの近くには昨夜、わたしが用意した洋服がハンガーに掛けられている。プロポーズを受けた次の日に、道夫さんに連れられて、山下さんや舞田くんに会ったあと、彼が洋服屋でわたしに買ってくれたものだった。道夫さんには貰ってばかりで悪いと言ったのに、その場を強引に押し切ってわたしにプレゼントしてくれたのだ。店員さんが笑いながら、わたしたちのやり取りを見ていたのを覚えている。そして、今日のデートで着ようと考えたわたしは昨日のうちから用意していたのだ。道夫さんに買ってもらった洋服に軽く手を触れて、もう一度左手の薬指を見る。夢じゃない、小さな声で呟けば、後ろからわたしの名前と共におはようと声がかかる。どうやら、道夫さんが起きたらしい。



「おはよう、道夫さん」
「今日はその洋服を?」
「もちろん!」



寝起き顔で優しく目を細めた道夫さんは、片手で眼鏡を探しながら、もう片方の手でわたしを手招きする。パジャマのままのわたしは、呼ばれたことさえも嬉しくて、ベッドへ一目散に後戻り。パタンパタン、とスリッパが立てる音はわたしの心の中の嬉しさを表すようなリズムを響かせているようだった。眼鏡を手に取った道夫さんはすぐに掛けるかと思えば、そうはせずに、隣に座るわたしの方をじっと見つめてきた。眼鏡を掛けるくらい、わたしは待てるのに。そう思った時には、彼は眼鏡を少し離れた枕元に置いて、わたしの肩と腰を軽く抱き寄せた。朝起きたばかりで、何も整えていないわたしの顔を間近で見られるのはまだやっぱり恥ずかしい。でも、道夫さんが顔をもっと近づけてくるのが分かって、わたしはゆっくりと目を閉じる。目覚めたばかりのわたしは、またどこか、夢心地の世界に連れて行かれるらしい。


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