*8主=エイト



「最近ちゃんと眠っているのかい?」



トーポが膝元に遊びにやってきて、甘えた声で鳴くので手を伸ばしてみると、わたしの人差し指に擦り寄ってくるのがとても可愛くて癒された。そんな和やかな雰囲気に包まれたところに、飼い主がやって来て、わたしの隣に腰を下ろす。木陰になっているこの場には動物が何匹か集まってきていたのだけど、エイトが座った時に軽く葉っぱの擦れる音がして、リスや鳥が距離を取ったのが分かった。でも、彼の優しい柔らかさを感じ取ったのか、すぐに元の位置に戻って来てはわたしの視界を賑やかにしてくれる。



「どうして、そんなことを言うの?エイトたちは睡眠時間をちゃんと確保してくれているでしょう?」
「睡眠時間を確保していても、君がちゃんと寝ているかは分からないよ」
「…エイトには隠し事難しいなあ」
「やっぱり。眠れてないんだ」



横に顔を逸らすと、意外と近くにエイトの顔があって驚いた。腰を下ろしたときは少なくとも、人間がひとり間に入ることの出来るスペースがあった筈。今の会話のどの瞬間に距離を詰めたのか全然分からなかった。
不意にトーポに触れている手では無い、反対の手を掴まれて肩を揺らすとふふっと笑う声が聞こえた。エイトは人の変化に敏感で、気遣いが上手な男の人。わたしが夜眠れていないことを誰に話したわけでも無いのに、こうやって気が付いて。



「あ、の」
「名前、今眠ったらどう?」
「そんなすぐ眠れたら苦労しないよ…」



ニコッと笑ったエイトの顔が瞬時にぼやけてくる。わたしの目に明瞭に映っていた筈なのに、まるで最初から其処に居なかったかのように暗闇が襲ってきた。瞼を閉じる前に女の子の高らかな詠唱が聞こえたような気がするけれど。







「ゼシカ、ありがとう」
「それにしても、よく気づいたわね」
「見ていたら分かる…かな」
「あんたがあの子のこと好きなのもよく分かるわ」
「ゼシカ!それは、」
「あはは、秘密にしておいてあげる」



ククールあたりは気づいてそうだけど、とゼシカは付け足した。エイトが密かに好意を寄せている名前は、彼の膝の上でぐっすりと眠りこんでいる。目を細めて温かい眼差しを送るエイトは彼女の髪を優しく撫でた。



「ゆっくり、おやすみ」


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