実験をしていた皿の上に浮かんだ液体は三日月の形をしていた。適当に落とした雫が描いた綺麗な三日月をちらりと見ながら、トレイはわたしの耳に付いていた星のピアスをゆっくりと外す。月と星が自分の手の届く所にあるなんて、不思議な感覚だ。もちろん、本物ではないのだけれど、いつもは空の上で届かない場所にあるから絶対に触れられない。月や星が触れなくても、目の前にいるトレイが触れてくれるからそれだけでいいのだけれど。テーブルの上に置いてあった金糸雀のオルゴールはいつの間にか音がしなくなっていて、わたしたちの間には静けさだけが流れていた。わたしの顎に触れた手はそのまま頬に上がってきて、ゆっくりと撫でる。夜更けにわたしの部屋を訪ねてくるなんて、ロマンチックなようで少し怖い。朝が来ると共に消えてしまいそうだから。お互いに何も言わずに重ねられたくちびるは何度目か分からないし、こうやってまるで逢瀬をするようになったのはいつ頃からか。啄まれる度に心臓は跳ねる。決して強く離さないようなくちづけはせずに、いつでもわたしの前から消えてしまうことが出来るのだと言わんばかりに、儚く、弱々しいのだ。でも、わたしはそれに縋ってしまう。おねがい、キスを、やめないで。 Image song:タキシード・ミラージュ |