「名前、唸ってるけど、大丈夫?って、大丈夫なわけないよな…」 「うう」 鋭い痛みにチクチクと刺されたり、鈍い痛みにじっくりと蝕まれているわたしは菅原くんを前にしても唸りを抑えることはできなかった。こんな醜態を晒すために遊びに来たわけではなかったけれど、昨日寝る前に事は起きてしまったのである。痛みが毎度酷いことをわたしは熟知しているのにも関わらず、菅原くんのお家への招待を断るなんて頭になかった。身体を引き摺ってでも行かなきゃという考えでいっぱい。けれども、今は来たことで菅原くんに迷惑を掛けてしまっているので、やっぱり来ない方が良かったと後悔し始めたところだ。 「ごめんね。菅原くん、わたし来ない方が絶対良かったよね」 「そうだなー、そんなになってたら来て欲しくないかも」 「ごめっ、やっぱり迷惑だよね」 「…でも、そこまでして俺の家に来たってことは楽しみにしてくれてたってこと?」 「…もちろん!」 菅原くんの両手がぐっと伸びてきて、わたしの身体全てをいとも簡単に捕まえる。逃げようだなんて考える一瞬の暇もなかった。触れ合った場所が多すぎて、身体のいろんな場所が嬉しい悲鳴を上げている。 「こういうときは、あっためるといいんだっけ」 わたしの痛みを上から撫でる菅原くんの表情は見えない。どんな顔をしているのだろう。お腹をさする手は背中に回って、小さな子どもをあやすように優しくわたしを撫でる。そ交互に繰り返されるそれにすっかり安心しきって、身体を預けてしまいそうだ。 「名前、辛いとき、俺の前では弱いところを見せてよ」 耳元で囁かれた言葉はわたしの心臓の鼓動を早める。意識は心臓の方に傾いて、お腹の痛みを忘れそうになったけれど、そう簡単に上手くはいかない。痛みの方が忘れさせるものかと対抗するように激しく主張した。でも、傍に菅原くんがいる。 「もっと甘えていいからさ」 どんどん弱くなるのはもしかしたら菅原くんがいるからかもしれない。 「孝支くん…」 「び、びっくりするだろー!いきなり名前で呼ぶなんて」 「だって甘えていいって」 「言ったけど!」 「じゃあ菅原くん」 顔を少し上げれば、頬を赤く染めた菅原くん。撫でていた手は止まっているし、そっぽを向いていた。ねえ、もっとして欲しいな、なんて精一杯の甘えを出しても今なら許されるのかな。 「さっきみたいに名前で呼んで。それがいい。あと、今みたいにちゃんと言葉にする方が俺はいいと思うよ」 思っていたことは無意識に口から零れていたみたい。 |