泥酔した彼女を見つけたのがおれで良かったと思う。昨日会ったときに脳裏に浮かんだのが一人で真夜中に徘徊する姿だったのだ。気になっていたおれは視えた場所をぐるぐると歩き回っていたところ、フラフラおぼつかない足取りの彼女を見つけることとなる。 「苗字さん」 「ん、だれ」 「おれです。実力派エリートの」 「ああ、迅、」 呂律が回っておらず、他にも何か言っていたようだけれど、おれが聞き取れたのはそのくらいだった。深夜にこんな意識のはっきりしていない女の人がいれば、恰好の餌食になるのはまず間違いない。とりあえず、おれのことを認識してくれたらしいので安心だ。 「迅はここでなにしてるの」 「それはこっちの台詞ですけどね」 ふらり、と倒れそうになる××さんの肩を抱いた。酒と煙草の匂いが鼻につく。今までそのような場所にいたであろうと予測できる。普段の彼女からこんな匂いがしたことなんてあっただろうか。いや、ない。少なくとも、こんなに飲み過ぎた彼女をおれは知らない。色々聞きたいことはあるけれど、この状態の彼女に質問したところで答えが得られるとは思えなかった。そう判断したおれは彼女を家まで送っていこうと考えたが、××さんの家はそういえばここから遠い。確実におれの家に連れ帰った方が早い。 「いやいや、」 呟いた言葉は彼女の耳に入らないことを分かっていた。肩を強く抱き寄せて、おれの方へもたれかかるようにし、彼女のスカートから伸びる細い足を持ち上げる。××さんは身じろいだようだけど、何も言わない。無言の了承だとこちらが都合よく受け取ってしまってもいいのだろうか。 「迅…」 そう零したあとに彼女の寝息が聞こえ始めた。 このまま連れ帰って、堕ちてしまってもいいってことなのだろうか。ベッドに寝かせたあとにブラウスに手を掛ける自分が想像出来て、おれは溜め息をついた。青い鳥を撃ち落とたら、赤い鳥に変わって逃げてしまう、そんな未来はいらない。堕ちたい、という自分の願望だけに止めておこうと決心したおれは、電気が切れかけ点滅している下、道を歩いていく。 Image song:墜落論/アーバンギャルド |