小指と一緒に赤い糸蝶々結びして、指きったって歌うの


*女の子≠プロデューサー



俺の部屋に入ってくるなり、磁石のようにぴったりとくっついてくる彼女の行動にはいつまで経っても慣れない。人目が気になるために外で会うことを控えているから、自然と家でのデートが多くなるのだが、それにしてもくっつきすぎだ。何も言わず、ただひたすらに肩に頭を乗せたり、腕を広げさせてはその中に飛び込んでくる。俺が疲れているのを気にして、ベッドに横になるように言ってくるのでその通りにすれば、腹の辺りに腕を回して、言葉にならない声を上げている。外に出て、一緒に買い物をしたり、飯を食べたりしたいんじゃないかと尋ねても、彼女は英雄がいればいいんだよ、と言う。
今日も相変わらずベッドに寝るように指示があった。クッションを二つ分掴んだ俺は、ゆっくりとベッドの上に乗る。身体を伸ばしながら、ゴロンと転がれば笑顔の彼女がベッド横に座り込んで覗いてくる。珍しくベッドに上がってこないと思ったら、これだ。じっと見つめ合うのがどこか気恥ずかしくて、クッションに顔を埋めると、唸り声が聞こえてきた。



「英雄ー!」
「はいはい」
「ちゅー、しよう」



事務所の中では割と自分が引っ張っていく場面があるのだが、目の前の名前だけには振り回されっぱなしだ。彼女のペースに巻き込まれて抜け出すことは叶わない。クッションをゆっくり上げると、すぐ目の前にまで彼女が迫ってきていて、くちびるをペロリと舐められる。ザラリとした舌の感触に、背筋が震える。思わず強張ってしまった肩を解すように、上げ下げしていると、名前がくちびるをくっつけてきた。半乗りだった身体を完全にベッドに沈めた彼女は、俺をベッドで仰向けにさせると短いキスを繰り返す。ちゅっ、ちゅっ、とまるで中高生のするような子どものキスが続く。焦らされているような気がした俺は、その何度目かで彼女の腰を掴む。腰に触れられるのが弱い彼女の動きが鈍くなる。逃さないとばかりに、その隙に肩を掴んで自分の方に引き寄せる。これ、何度かやってるんだけど、未だに名前は学習しないんだよな。ぷっくりとしていて、色のついた柔らかいそれにくちびるを押し付けては、ほんの少し空いている隙間に舌を捩じ込んでいく。ちょっと強引なくらいが、名前は好きなことを俺は知っている。色っぽい吐息が漏れることも構わず、抜き差しを繰り返せば、彼女の瞳にまるでハートが浮かぶようだった。彼女が俺に染められているのかと思ったが、実はそうでもないらしい。俺が染められているのかもしれない。呼吸の乱れた彼女をベッドに押し倒して、形勢逆転だ。上に覆い被さって、見下ろせばあんなに余裕のあった彼女は目を逸らしている。



「俺だけ見ればいいから」
「……英雄、あれ」



彼女が指差した先には白い薔薇が見える。それも花束で、だ。真っ白なそれを染めてしまっているのは俺なんだ、そう思うと息が詰まる。早く、名前の服を剥ぎ取ってしまいたいなんて思いも込み上げてくる。理性との戦いだった。しかし、ぐっと堪えた俺は、ベッドから下りると花束を手に取って、ベッドに座り込んだ彼女の前に差し出す。片膝をついて、まるで姫に薔薇の花束を贈る王子のように。うっとりとした表情を浮かべた彼女の手が、俺の手の上にそっと重なる。好きだ、と言えば、名前は大好きだと返してきた。そういうところ、いつまで経ってもずるいな。



「この薔薇、二人で飾ろうね」



Title:誰そ彼
Image song:ラヴィアンローズ/櫻井桃華
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