隠しきれない想いの端くれをあたためていた


*女の子≠プロデューサー



校門を出た頃には、帰り道いっぱいに部活帰りの学生たちでいっぱいだった。みんな夕日を浴びて橙色に染まっては、眩しそうに目を細めていた。そういえば、プロデューサーちゃんから次の仕事の連絡が入ってたっけ。スマホを起動すれば、さっきまで話をしていたHigh×Jokerのやり取りが今度は画面上で繰り広げられている。次の仕事を全員が楽しみにしているのが分かって、オレはグッと拳を握った。詳しい内容は何も知らないけれど、テンションはまるで雲を突き抜けていくようだった。
ふと、後ろに人の気配を感じた。パタパタと駆けて来るような音に耳を澄ましながら、今日のおさらいとばかりに歌詞を口ずさむ。誰にも聞こえないように。靴音はもうすぐそこで、ついに隣までやってきた。同じクラスの名前ちゃんだった。肩が並んだと思えば、早歩きで行き過ぎていく彼女は手を振ってきたので、オレも振り返す。クラスの女子の中でも割と会話をする方である名前ちゃんは、授業中やたらと目が合う。特に、席替えをして今の席になってからは頻繁だ。学校の男子高校生としてではなく、ちょっと仕事の自分に変身したように微笑み返すと、彼女は自分からこちらを見てきたクセに教科書で視界を覆ってしまう。毎日のように繰り返されるそれは、オレにとって楽しみになってきていた。だって、まるでオレに恋しているかのような反応するからなあ。それとも、アイドルとしての伊瀬谷四季を見ているんだろうか。そこは分からないっす。







次の日、机の上に鞄を下ろしたオレがチラリと隣を見やれば、名前ちゃんは小さな手鏡を真剣に見つめていて、周りのことはまるで見えていないようだった。前髪をしきりに整える様子は、どこかネコの仕草を見ているような気分になる。いつもは下ろされている髪の毛もハーフアップにされていて、その部分もおかしくないかと何度も確認しているらしい。パタン、と閉じた手鏡を胸ポケットに入れた彼女はようやくオレが見ているのに気づいたようで、身体をそわそわと揺らしながら、少し色づいたくちびるを開く。盗み見するはずが、見つめちゃっていたっす。



「お、おはよう!」
「おはよー、名前ちゃん。今日ちょっと雰囲気違うっす」
「そうかな……?」
「いつもの名前ちゃんもカワイイっすけど、こっちもアリ!」
「……か、かわっ」



あたふたし始めた彼女に笑いを零すと、名前ちゃんが急に窓の向こうを指差しながら、あの、いい天気ねと言う。詰まった言葉に自分で笑っている。その表情に目を奪われていたのはオレだけの秘密っす。もし、その髪型やくちびるのリップが、オレの気を惹くためだったら。そんなことを考え出すと、目を合わせるのが気恥ずかしくなってくる。今、彼女は耳を赤くしながら窓の外を見つめているけれど、この後こっちに振り返ったら、今度教科書で顔を全部隠してしまうのはオレかも。



Title:誰そ彼
Image song:はにかみdays/島村卯月
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