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「いよいよ地区大会決勝だ!あの帝国とまた戦えるんだ 特訓の成果見せてやろうぜ!」



守君は真っ白な靴下でぴょんぴょんとシートの上を飛び跳ねるようにして皆に今日の試合の事を話している、斜め前には豪炎寺君 横には守君...今日は朝からハッピーだなぁ。



「...〇 その顔どうしたんだ」



豪炎寺君から話し掛けられることが珍しくて私は一瞬思考が停止した、電車の中なのに 豪炎寺君の周りだけキラキラと王子様みたいなオーラが光ってる。



「ううん、なんでもないの」

「そんな所を怪我するなんて何をしたんだ」



気遣いかと思ったけれど この目は疑ってる目な気がする、木野さんがチクったのかなぁ いやあの女はそんな度胸ないはず...。ちらりと豪炎寺君の横の通路を挟んだ隣に座っている染岡君に視線を送れば、彼は嫌そうに私に視線を絡ませる。


あの男なんで言っちゃうかなぁ。



「本当に なんでもないの豪炎寺くん」



声色だけは柔らかく染岡君を睨みながら呟けば、豪炎寺君はキリッと長い目を私に向けて「そうか ならいい」と返した。



「なっ、なんスかーあれ!」

「まるで要塞だ...!」

「あれが帝国学園です そして中央にそびえ立っているのが決勝を戦うスタジアム」



壁山君の声にゾロゾロと窓際に貼りつく男の子達のおかげで私は豪炎寺君の鋭い目から解放された、綺麗な顔の男のが睨んでくるとこんなにも怖いんだなぁ。

でもカッコイイから全然いいんだけれど。



「守君 楽しみだね試合」

「おう!応援よろしくな◎!」

「もちろん!」



誰よりもキラキラした目で私を見てくれる守君、本当に私は守君が好き。だから木野さんに意地悪しちゃうんだから仕方ないよね。













にんにくと油の香り。
全然可愛くない監督のお店である雷雷軒で私達は地区大会優勝のお祝いをしていた。



「やったぞー!」

「やったぞー!!」


「俺たちは優勝したぞー!」

「優勝したぞー!!」



何回も言いたくなっちゃうくらい帝国学園に勝ったのが嬉しかったみたい、にんにくの香りがしたら嫌だから私は餃子には口を付けずに炒飯の山にレンゲを刺した。



「しかし帝国学園も全国大会に出られるとはな」

「大舞台でもう一度戦えるなんてワクワクするぜ!」



可愛い男の子達の会話に割って入る雷門さん、いっつも偉そうに威張って本当にムカつく そんな女に対して音無さんと木野さんは媚を売る。



「これからは音無さんは情報担当、木野さんはフィジカル面担当でよろしくって?」

「私には担当くれないんだね雷門さん」

「あら...貴女に何ができて?」

「雷門さんひっどーい、私のことそんなに嫌いなの?」



目金君を挟んで私達は睨み合う。



「おいおい!二人共やめるんだ、マネージャーは4人とも良くやってくれてるじゃないか!」

「雷門さんはそう思ってないみたいだよ守君」



捨てられた子犬の目をしてみせれば守君は雷門さんに「まったく、仲良くしろよ!仲間だろ!」と小さい子を叱るように雷門さんに言い聞かせる守君。



「はぁい、雷門さんこれからは仲良くしようね」



返事すらない、ムカついて立ち上がれば土門君が「監督!俺餃子もうひと皿」と元気よく声を出した。












全国大会の入場パレード。関東ブロック代表として歩いたあの芝の感触忘れられないぜ、みんなの気持ちを背負って絶対に俺達が優勝してやる!

控え室で皆とそう約束して◎と、部屋を出た。



「守君、今日部活は?」

「今日は朝練で終わりだぜ しっかり休んで明日からの練習に備えるんだ!」

「ほんと??それじゃ、ケーキ食べに行こうよ!ケーキ!」

「ケーキ...ケーキ、たまにはいいかもな 行こうぜ◎」



◎は心底嬉しそうに小さな身体をぴょんぴょんと跳ねさせて俺の腕に自分の腕を絡める、制服と制服が擦れる音が なんだか久し振りな気がして急に恥ずかしくなった俺は頬っぺたに熱が集まるのを感じながらギクシャクと足を進めた。



「...円堂?」

「鬼道?鬼道じゃないか!」



こんなスポーツカー初めて見たぜ...!
窓から鬼道は少し顔を出して いつもとは違う顔をして笑った。



「帰りか?」

「うん、帰りにケーキが食べたいらしくてさ」

「...彼女か?」

「えっ、あぁ 実は...って 何笑ってんだよ鬼道!!」



口元に手を当てて笑ってる鬼道。



「いや、すまない サッカーバカの円堂も恋愛をするのかと思うと面白くてな」

「なんだよ 失礼だな!」

「すまない、驚いてしまってな だが...恋に現を抜かして負けたら許さないぞ」

「あったりまえだろ!じゃあな、鬼道!」

「ああ 楽しんでこい」



窓がゆっくりと閉まっていく、そうして鬼道が乗っているスポーツカーは俺達とは逆の方に走っていった。



「守君 私の事彼女って言ってくれた...」

「え、だって 彼女だろ」



当たり前の事を言い出す◎、真っ赤な顔で「もー 好き」なんて俺の二の腕を掴んだ。



「ばっ、恥ずかしいだろ...!」



暫く二人して赤い顔で見つめ合ってしまった。





20190422