明日が来るなら

僕にとって彼女は世界だった。艷やかだった髪も 綺麗に塗られた唇も 今はどちらもカサついていて、たったそれだけでも別人に見えるのは 彼女が全てを忘れてしまったからなのか。

幼馴染の僕達はきっと将来恋をすると思い込んでいた、長くは生きれないけど きっと彼女は僕を好きでいてくれると思っていた。



「今日はいい天気だよ」

「サリューさん ありがとう」



君は僕をサリュー"さん"なんて呼ばないよ、あの日だ...晴れ晴れと天馬達に負けて やっと組織では無く仲間だと 友人だと互いを呼び合うことが出来たあの日。

彼女は急に意識を失い 目を覚ましたら、スッポリと記憶がなくなっていたのだ。自分が女だということや、言葉以外の記憶が無いという。悪い冗談だと僕やメイアが理不尽に彼女を責めた、だけど...「ごめんなさい」と怯えた目を揺らすだけで 僕達と共に生きた日々を彼女は忘れた。マネージャーとして 支えてきたじゃないか。


あまりにも 残酷だとは思わないか?


恋心を持つことが不自然な事だと教育された僕にとって、君という存在は眩しくて 天馬との握手の後ふつふつと湧き出たあの感情に「君が好きだ」と言おうと決めたというのに。



「綺麗な色の空」

「本当だね」

「サリューさんは今日用事ないの?」

「僕は君と一緒にいるよ」

「悪いよ、毎日 私のお世話を」


「いいんだよ 僕は君と居たいんだ」



震えた声で彼女の指に触れた 記憶が無いくせに、性格は変わらないなんて。






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サリューさんは私を常に気にかけている、沢山話を聞いたけど どれも覚えが無いのですぐに忘れしまう。申し訳なくて 彼を突き放そうとするも、彼の瞳が切なげに揺れると言えなくなってしまった。



「サッカーしてる」

「本当だね」



小さな子供たちがサッカーボールを蹴りあっていた、楽しそうに笑う彼らに こちらまで楽しくなってしまい笑えば サリュー君が大きく目を開いて「覚えてる?サッカー?」と嬉しそうにこちらを見た。



「ううん 楽しそうだなと思っただけ」

「そっか ごめん」

「わたしもごめんね」

「戻ろうか」



あからさまに落胆した様子を見せてサリュー君は力なく笑う、私の手を引き道を戻った。部屋に戻り ベッドに腰をかけたら、彼はいつも通りベッドの前にある二人がけのソファーに座った。



「さっきはごめんね、勘違いさせて」

「いいんだ 僕が悪い」

「そんなことないよ」

「...ずっと好きだったんだ」



窓から入る春の風がサリューさんの髪を揺らして、私を見つめる彼の瞳に心臓を絞めあげられるようだ。



「サリューさん」

「好きなんだ、好きだ」



ソファーからおりて私に縋り着くように私の足元へしゃがんだ、彼の柔らかい髪が指に触れる。同じ様に涙を流せたらイイのに、貴方の告白に 答えられたらいいのに。

でも できない。



「そんなに想われてたのに 貴方を忘れるなんて」


「でも 時間は傷を癒すように、その間 僕達の新しい思い出を作ればいいのかな」

「...ごめんね、サリューさん」

「僕のことをね 君はサルと呼んでたんだよ」



だから サルと呼んでくれないか。
消え入りそうな声で私にそう言えば辛そうに私を抱き締めた、私の頬を濡らす彼の涙を拭うかのように頬を擦り寄せると 彼は私から顔を離して私を見つめた。



「きっといつか 恋をするんだって思ってる」

「...私も そんな気がする」



唇が触れるか触れないかの距離で彼は「明日が来るなら 今はそれだけでいい」と呟き、唇には触れず鼻をくっつけて 暫く静かに見つめあった。





20180509〔告白の日〕
⇒エルドラドのマネで幼馴染、記憶喪失な悲甘

神楽様、初めましてriricoです。2つもリクエストありがとうございました!

実はサリュー初書きでして...クロノを観直すす時間が無かった為覚えてる範囲で書いてしまったので シチュ希望に添えていない点があると思いますが、最後に少しだけ甘さを入れ後は切ない感じにしてみました!鼻キスをさせたかったのです。

お時間ある時感想聞かせて頂けると嬉しいです、今後も企画沢山用意してるので気になるものがあればご遠慮なくご参加ください!強引な設定にしてしまい申し訳ないです...、改めましてリクエストありがとうございました!

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