I wanna kiss you
「もう別れてっ!私の女盛りとしての今を有人の我儘に潰されるのなんて嫌!」



ヒステリーに叫んだあの日の事を忘れない、今日みたいな めでたい日まで私は彼のあの悲しそうな顔を忘れられずに思い出す。


耳の上にさしてある胡蝶蘭の髪飾りを引き抜いて 私はもう少し上の位置に飾った。恐ろしい程綺麗な私、好きだけど結婚なんてしたいと思ってなかった 私の旦那になる男は優しそうに笑って 私を自慢げに見つめる。


はあっ

肺に沢山息を吸って 思いっきり吐いた、キリキリする胃にいつも飲んでる胃薬を流し込む。



「浮かない顔ね」

「お義母様...いえ、マリッジブルーってやつだと思います 色々と考えて...」

「へえ、そうなの 昨日のバチェロレットパーティーで飲み過ぎたんでしょう そんな顔で貴女式場には足を踏み入れないでちょうだいね」



資産家だかなんだか知らないけど、いつもいつも鼻につく話し方をして ムカつくなぁ。有人は権力もお金も全て持ってたけど、こんなんじゃなかった。

私は本当に幸せになれるだろうか 旦那になる男とお義母さん達はこの部屋から出ていった、ハリウッドミラーにうつる私の顔は どうもひんやりとしてて 可哀想。












「お兄ちゃん、分かった?ドラマチックに現れて掻っ攫うの、出来るわよね?」

「...分かっている」



どんな歳になっても春奈の圧には負けてしまう。


バチェロレットパーティーに出かけた春奈が血相抱えて夜中家に来たと思えば「絶対に◎を明日の式から連れ出して」なんて 海外ドラマみたいな事を言い出したものだから 眉間に寄った皺が半日経ってもとれない。


"世界で一番大好きなのは今も昔も有人なのに...幸せじゃない結婚をするなんて、私って本当に馬鹿"


幸せなはずだった彼女はそう言って泣いていたらしい。

オレンジ色のパーティードレスに身を包んだ春奈はシフォン素材の柔らかいドレスを揺らして車から降りた、もう1度こちらを振り返り「お兄ちゃん、後悔するようなことだけは絶対しないでね」と優しく笑うと 門を潜り中へと入っていった。

式場の前に停めた車の中から彼女の事を考えた、いつも優しい彼女が見せたヒステリックな叫びと涙に心臓が止まってしまいそうなほどショックを受けたのを思い出す。

◎が今幸せならそれでいいと思っていた、これを機に義父さんが持ってきた見合い話を受けようとも思っていた...だが 彼女が幸せじゃないなら俺はそんな見合い話など受けられない。



「◎」



俺も重い足を動かして彼女の結婚式へと向かった、自分の目で確かめるまでは無責任な事は出来ない。

白を基調とした結婚式場には 見慣れた仲間達と、昔のライバル達が◎を祝う為に集まっていた。

そんな彼等に挨拶をしていると昔に戻ったような感じがして、ポケットに忍び込ませた指輪を握りしめ気持ちを落ち着かせようと深呼吸した。円堂は赤紫のロングドレスを着ている夏未の腰を抱いて幸せそうに◎の話をする二人を見て 彼女に早く会いたくなった。









お父さんの腕に自分の腕を絡めて開かれた扉の向こう側をぼーっと見つめた、みんなの顔を見て少しだけホッとしたのも束の間 春奈の横に座ってる有人を見つけて私は膝から崩れ落ちそうになった...そういえば酔っ払った勢いで招待状を送ってしまった。

彼は私の事をジッと見つめてる、赤い瞳は炎の様にメラメラと燃えてて 窮屈なウエディングドレスと肌の隙間は汗でじっとりと濡れていた。



「誓のキスを」



いつの間にか私は誓いの言葉を述べ終わっていたようだ、クラクラと目眩がする ベールを上げて私の頬を優しく撫でる新郎をよそに私はちらっと有人の方を見た...ら...

立ち上がって私達の方へと歩いてきた。

騒然とする会場には目もくれずに有人は私の腕を掴むと驚きの言葉を私に投げかけた。



「◎、誓いのキスをしたいのは誰だ?」



赤い瞳に吸い寄せられるように「有人」と呟くと、私の腕を引いて有人は走り出した。皆の方を見ると春奈ちゃん以外はポカンと驚いていて、恥ずかしくなってきたけど すぐに円堂君の「鬼道ー!カッコイイぞー!」なんて茶化した声が。


走って走って辿り着いた車に乗り込んで私は荒い息を落ち着かせるように何度も深呼吸をして、運転する彼を見た。



「有人...」

「お前の事を幸せに出来るのは俺だけだ、◎ 2年前お前が出ていったあの日 本当に反省したよ」

「あれは私が悪いの、寂しくて...ついあんな事を」

「これからは、お前に寂しい思いはさせない」



暫く車を走らせ 有人は車を停めて私の方を見つめた。



「◎、結婚してくれ」

「...はい、っ」



綺麗に化粧をしてもらったっていうのに私はボロボロと涙を流す、私の左手にはめられた指輪を外して ポケットから取り出した2年前に貰ったキラキラと光る指輪をつけてくれた。



「誓いのキス するか?」

「...ふふ、うん 大好きだよ有人」



形のいい唇に自分の唇を重ねると、私達は止まらなくなってしまい 何度も何度も角度を変えてキスした。



「俺以外が着せたドレスを早く脱がせたいんだが、俺の家に来るか?それとも、ここで脱ぐか?」

「ばか...こんな所で脱いだら捕まるって」





20180612〔恋人の日〕
元彼の鬼道が結婚式に乱入

南小雪様、初めまして管理人のriricoと申します。そして、今回はアップが遅くなってしまいまして申し訳ございませんでした。

元彼の鬼道が結婚式に乱入するなんてシチュ思いつきもしませんでした...!なんて可愛くて最高のシチュ~!と書いてて凄く楽しかったです。

今後も是非是非よろしくお願い致します、この度はリクエストありがとうございました!
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