#優しい人がいい


腕を離しても私はどこにも行かないというか、どこにも行けないのに おじさんは私の腕を掴んで離してくれない。近くに停めていたシルバーの車の助手席には アダルトな雑誌が散乱していたが、おじさんはそれを手早く片付けて 私を横に乗せた。



「あ、コンビニでジュースとか買う?」

「ううん お兄さんの家お茶あるならそれでいいよ」

「本当?分かったよ、それじゃ家行こうね...」



走り出した車の中は どうも居心地が良くて、少し遠くに見えるネオン街をぼーっと眺めた。ヒロトさん達 まだ私の事探してるのかな。

別に 私みたいな孤児1人ほっといてくれてもいいのに。



「お兄さん ちょっと着くまで寝ててもいい?」

「あっ、ああ いいよ...」



ふふふ まだ中学生だもんね、眠たくなる時間だよね!と嬉しそうな声に返事をせず 目を閉じた。











なんで、電話を取らないんだ。

◎ちゃんを追いかけて街中走ったんじゃないか...?ハアハアと息を切らす俺達。



「やっべェ 酒が...回って...うっぷ」

「不動君ごめんね、俺の監督不行届で...」

「いや お前は悪くねェだろ、しっかりしろよ」



不動君が困ったように笑った。



「小さかった頃からヒロトヒロトとうるさかったから、お前に心配されたいんだろうな」

「...はぁ 実はさ、今日みんなと会う前◎ちゃんに告白されたんだよ だけど普通断るだろう?」

「あー、原因はそれだな...」

「やっぱりか...」



溜息がネオンに飲まれる。

俺達は、また手分けして探す事にした。本当に...頼れる仲間が居て本当によかった、不動君と鬼道君はアーケード周辺で聞き込みを 円堂君はお店なんかに聞き込みに...。

みんなありがとう

俺と緑川は近くにあるお店を虱潰しに回った、もしかしたら ホテルの1室に閉じこもってるんじゃないか...。それだけならまだいいが、変質者に襲われて もし殺されたりしたら?不安で心臓が痛むが、10軒目のラブホテルに足を踏み入れた。












おじさんの家は6畳ほどの殺風景な部屋で テレビと冷蔵庫と布団だけがあった、壁にはえっちなポスターがかかってて んーなんか寂しい中年の一人暮らしって感じ。

ぽんぽんと布団の上を叩いて私に座るように命じるおじさん、他に座るところがないので渋々布団の上に。



「◎ちゃんは、どうして 家出したの?」

「んー なんか寂しくなっちゃって」

「へえ...さみしいんだ...」

「うん」


「お兄さんもね 寂しいんだぁ...」



私の白いワンピースの裾におじさんの長い爪が触れた 布団は少し湿ってて不快感が私の太ももを襲う。だけど、今はこの人にしか頼れないので じっと表情変えずに座ってた。

ふと 猫がいないことに気が付いた。



「ねえ、お兄さん 猫は?」

「あっ あぁ猫...猫はね、今知り合いに預けてるんだよ」

「そうなんだ、猫触りたかったな」



猫の匂いが全然しないこの部屋には、きっと最初から猫なんて存在してなかったんだろう。そんな事 子供の私でも分かるもん。



「ねっねぇ、◎ちゃん...っ」

「なに?」



一瞬の事だった、無精髭に包まれたカサカサの唇が私の唇を奪った。ちくちくと上唇の上あたりに突き刺さる髭が痛くて身じろぐと おじさんはぎゅっと手首を掴んで「逃がさないよ...」と微笑んだ。



「やだっ!離してよ...!!中学生にこんな事するの犯罪だよ!!」

「この部屋に入ったんだから 同意の上、だよ...?えへへ ◎ちゃん可愛いね...キス、もっかいしよう」

「っや、やだ!!ほんっとにやだ! 気持ち悪い!!!」



その一言にブチ切れたおじさんは私の首を掴んだ。




20180321

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