#家出はもうやめた
「ヒロト、やめろ...痣になるぞ」
「殺されてたかもしれないのに 黙ってられるわけないだろ!間違えた時に叱るのが大人の役目なんだ、緑川 少し外に出ていてくれないか」
「...分かった、円堂達にも連絡しとくよ 心配してるだろうし」
「すまない 緑川、頼む」
「◎ 無事でよかったよ」
緑川の優しい声に◎ちゃんは下唇を噛み 何度も頷いた、俺は怒りが収まらない自分が怖くなる。
白いワンピースは 先程まで丸められていたからぐしゃぐじゃに皺が出来ていて、下着姿の背中には痣が出来ていたのが見えた。
「君は ことの重大さを分かってるかい?」
「うん...」
「何でこんなことしたんだ」
「だって、ヒロトさんは私の事なんてどうでもいいんだもん」
「僕が君の告白を真剣に聞かなかったからかい?」
睨むかのように上目遣いで俺を見る◎ちゃんは、全部の責任を俺達大人に擦り付けるつもりなのだろう。...いや こうなったのは、俺達大人の責任だ。
「よく考えて ◎ちゃん、僕は君の気持ちに応えることが出来る年齢じゃないんだよ」
「なんで?年齢なんかじゃなくて気持ちが知りたいって言ってるのに...」
「気持ちを伝えたらダメなんだよ」
「なんで...?」
「何回言わせるつもりだい? 僕は大人で、君は子供だからだ」
「そんなの理由にならないもん!!!!」
思わず叩いてしまった 彼女の頬は少し赤くて、俺は怒りに身を任せてしまった自分の掌の痛みと罪悪感で 胸が痛んだ。
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叩かれた頬っぺたかジンジンと痛む、怒りと痛みと悲しみと恥ずかしさと...いろんな感情が互いにボールを投げあって 受け止めきれない。
咄嗟に掴んだヒロトさんの胸元、シャツのボタンがブチンと1つ落ちた。
「結局さぁ?自分の顔に泥塗られるのが嫌なんでしょ?」
「...僕はね君を守りたいんだよ、迷惑ならいくらでもかけてくれてイイよ むしろ子供は迷惑をかける生き物なんだから」
「綺麗事しか言わないよねヒロトさん」
「どう思われてもいいけど、心配はさせないでくれないか...君に...何かあったらって、」
眼鏡越しにも分かる 緑の瞳から零れ落ちる涙はとっても大きくて、ダイアモンドみたいにキラキラしてる。泣いてる...ヒロトさんが...。
「ねえ、◎ちゃん 僕の事が好きなら約束して」
「......なにを?」
「大人になるまで僕は待ってるから、◎ちゃん もう2度とこんな事しないで」
「わかった、ごめんなさい...ヒロトさん...ごめっ...ぅっ...」
「本当に...泣き虫だね、君は」
ぎゅーーっと、身体が軋むほどにヒロトさんが私を抱き締める。優しい心臓の音に私は シャツに染み込ませるように涙を沢山沢山流した。
髪を梳かすように撫でて 身体を少し離すヒロトさん、向かい合った私達は しばらく無言のまま見つめ合う。
「◎ちゃん」
薄くて綺麗な唇を開き、その沈黙を破るヒロトさん。
「なに?」
「小さい手だね」
ヒロトさんの手にすっぽりと入ってしまう私の小さな手、長くて綺麗な指に引かれて 手の甲を上に向けられる。
暫くふにふにと 私の手を触って、ヒロトさんは...私の手の甲に唇を軽くつけた...。まるで プリンセス映画みたいに、王子様がお姫様にするみたいな...。
「ねえ、言葉には出せないけど...これが俺の最大限の愛情だよ」
「...あ、う...うん」
「さっきは叩いてしまって本当にごめんね」
初めて 私の前で俺と言ったヒロトさん、初めて見る表情で 私の目を見つめてる。そんなロマンティックな空気を吹き飛ばしたのは 外から聞こえる瞳子さんの声だった...。
「...姉さん、カンカンだよ」
「うう 瞳子さんが一番怖い、のに」
「大丈夫 僕も謝るから一緒にね」
「外出禁止1ヶ月は食らうだろうけどね」と、人差し指を立てて笑う ヒロトさんに血の気が引いたけど、いっぱい怖い思いをした後だから 瞳子さんの顔を見ると また涙が出てしまった。
「はぁ...貴女は本当に、こんなにも心配をかけて...!しばらく外出禁止よ!」
「はい...ごめんなさ、」
「でも本当に貴女が無事でよかったわ...」
「瞳子さぁん...ごめんなさいっ、みんなごめんなさっ、い...」
まるで小さい子供みたいに泣く私の姿を見て、瞳子さんとリュウジさんとヒロトさんは困った様に笑って抱き締めてくれた。
20180409
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