狂おしいほどの幸せを
「今日もお疲れ様、悠馬」
「ありがとう ◎」
彼女はフカフカと柔らかいタオルを俺に手渡してにっこりと笑った、俺にとって大切な人。深い闇に沈んでいる俺にとって 唯一の光であり、俺を人間にしてくれる人。
「悠馬、今日も いつものテラス席空いてたらお茶しようよ」
「...そうだね 西陰には伝えておくよ」
「西陰訓に悪いことしてるね、独り占めしてしまってる」
「大丈夫、アイツだって彼女と過ごすよ」
綺麗に整った前髪をサラリと撫でた、くすぐったそうに目を細めて笑うと彼女は「着替えてくるね」と言ってロッカールームへ向かっていった。
「君みたいな女の子はこの世界でたった一人だよ」
聞こえるわけないのに、彼女の背中に向けてそんな言葉を投げた。タオルで汗を拭いて 彼女と出かけるために自分も着替えようと、背中を追った。
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いつものテラス席は空いていた、私はミルクティー 彼はカフェオレ ゆったりとした時間を過ごしながらお互い無言で読書を楽しむ。カランカランと氷が溶けて踊っている音や、周りのお客さんのひそひそ話 私達のBGMとして優しく時を刻んでいく。
「...読み終わった」
「悠馬本当にはやいよね もう少しだけ待ってて」
「いいよ 焦らないで、ゆっくり読んで」
随分と氷の溶けたカフェオレを一口飲んで悠馬はぐいーんと背伸びをした、眠たそうに瞼を擦ると 彼は頬ずえをついて私のことを見る。
「睫毛 長いね」
「急にどうしたの」
「こうやって、じっと見ると 黒々としてて 綺麗な睫毛だなって」
「ありがと、」
彼に褒められると照れてしまう、まあ 彼に褒められて照れない女なんて居ないと思うけど。付き合っている私でさえ こんなにドキドキしてしまうんだから、他の女なんて死んでしまうと思う。
「悠馬だって長いよ 睫毛」
「俺は男だから あんまり意味無いよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
カランッ
楽しそうに氷が鳴った、ミルクティーは随分と水っぽくなっていたけど 悠馬と一緒にいる時に何を飲んでも美味しく感じるのは恋をしているからなのだろうか。
「後、15ページ ちょっと待っててね」
「君のこと見て待っとくよ」
「また 恥ずかしいこと言うんだから...」
「好きだよ」
歯の浮くようなセリフが並べられているこの小説なんかよりもグッとくる、悠馬のせいで 今まで読んできた300ページが無駄になった。
ジョンがキャリーに愛を告白する その台詞なんて、霞んでしまって 私はつづきを読むのをやめた。
「あれ、読まないの?」
「悠馬のせい」
「俺静かにしてただろ」
「...意識せずにそれなんだよね、ほんと...心配になるよ」
「何言ってるの?」
本当にわからないって顔して私を見る。
綺麗な唇にそっと触れたくて、私は悠馬の 顎に人差し指をおいてみた。
「...どうしたんだい?」
「綺麗な唇だなって」
「誘ってる?」
「ばか、こんな テラス席でキスなんかしたら沢山の人に見られちゃうよ」
「別に いいじゃないか」
「良くないよ 恥ずかしいし...」
指を離した その瞬間
悠馬の少し冷えた手が私を掴んだ、グイッと引き寄せられる様に近付けば 私が欲していた綺麗な唇が私の唇に重なった。
「...っ、ゆ」
重なっただけだというのに、こんなにもキュンと弾ける気持ちになるなんて。私は耐えられなかった 気持ちが良くて、雲の上に居るみたいで またカランっと氷が鳴った。
「可愛い顔」
「こんなとこで、」
「...もっと見せつけようよ」
私の後頭部を掴んで、次は首に噛み付いた悠馬...。痛みに眉をひそめると 彼は弱めるどころか強めた、私の首が無くなっちゃうんじゃないかってくらい 痛さと甘さの両方に毒されて私は小さく本当に小さく喘いだ。
「...っ、いった」
「ついたよ、赤くて綺麗な歯型」
「もう こんなとこで...ばかゆうま」
「だって君は俺のモノなんだから、外だろうがどこだろうが 俺の好きにしていいんだよ」
所有物扱い発言も可愛らしいと思ってしまう私はとんでもない大馬鹿で、遠くにいる呆れ顔の店員さんに そんな目で見ないでよと思いながら 首につけられたキスマークという名の首輪を撫でればポコポコとしていて...
ヒリっと痛むそれを見つめて幸せそうに微笑む悠馬に、愛しさが軋んだ。
20180523(キスの日企画)
マネージャー主、愛あり。独占欲むき出しなキスマークを残す
通行人A様、この度は企画への参加誠にありがとうございます!
私、野坂君の夢書くの大好きなんですけど愛のある野坂君はこれが初な気がします...!テラス席で二人で本を読みながら、人目を気にしない野坂君がキスしたり首に噛み付いてきたりななかなかヤンチャになってしまいましたが...!そんな所が、お気に入りです。ご希望に添えてなかったら大変申し訳ございません...!
お時間ある時で結構ですので、ご感想頂けると嬉しいです...!頻繁にリクエスト募集しますので、気になるなーって企画ありましたら是非またご参加くださいませ。改めまして ありがとうございました!