世界だって君にあげるよ

冬休みに入って 最初のデート、クリスマスは過ぎてしまったからただの寒い日だけど キラキラした特別な日にしてあげたくて私は悠馬に内緒でデートプランを考えていた...のだけれど。



「別に そんなに頑張らなくてもいいんだよ」



ぽんぽんと頭を撫でてくれる悠馬に肩を落とした、頑張り過ぎて空回りしている今日のデート 悠馬に気を使わせてしまったようだ...。



「軽くでいいよ」

「...軽い気持ちじゃ生きれないよ、だって大切な人生の大事な時間を二人で過ごすなら 最高の日にしたいじゃん」



私の言葉に目をぱちぱちと瞬きさせた後 ふふっと笑い出す悠馬。



「...なんでそんなに笑うの」



行きたかったカフェは年末休業、閉まっている店の前に腰をかけて悠馬の肩をコツンと優しく殴った。



「君がこうして俺の隣で生きてくれた事が特別なんだよ、君と出会ってから毎日この街路樹に飾られたイルミネーションみたいにキラキラして見えるなんて 素敵だと思わないかい?」



だから 落ち込まないで。私の手を握って 指先にキスをする悠馬、どきんと胸が高鳴ってじんわりと温かくなった。



「...うん」

「折角ここまで来たんだ、歩いて戻ろうよ いつもなら電車やバスに乗るところだけどさ 色んな風景を見よう」



太っちょの野良猫が私達の前を通り過ぎる、こんな映画確かあったな...なんて考えていたら悠馬が綺麗な唇を開いた。



「...同じ事考えてる?」

「猫について行ったら」

「素敵な場所に着くかもね」



のそのそと歩く猫の後ろ姿を見た。



「行ってみる?」

「ああ あの映画みたいだよね、君が好きな」



二人で立ち上がって 猫の後ろを追った。











「本当に映画みたいだったね」



太った猫はのそのそと歩きながら歩道を歩いていたと思えば、急に俊敏に塀にジャンプをして早足で歩き出した。そして 塀から塀に飛んだり、歩道に戻ったり 2時間ほど歩いて着いた場所は...綺麗な青の照明に彩られた薄暗いカフェ。



「こんなこと本当にあるんだね」



ここで飼われているのか おやつをねだりに来ただけだろうか...物静かな店主が与えるおやつに猫はもそもそと食いつく、青い照明がゆらりゆらりと揺らめく店内はまるで深海のようだった。



「陽が暮れた後の時間を名前にするなんて 綺麗だね」

「英語?」

「確かフランス語だよ」



反転された店名を見つめながら 俺と彼女はそんな会話を重ねる、夕陽の色ではなくて 沈んだあとの青色を思わせる照明をちらりちらりと何度も見つめれば くらっと視界が揺れた。


お待たせ致しました。ロボットのような声の店員さんのスラリとした手から カラフルなゼリーが入ったジュースを渡される。



「凄い色...」

「綺麗だね」



これに出会えたのも 彼女のおかげだ、最初から最後まで彼女は素敵だった。



「ありがとう ◎」

「...こちらこそ」

「ほら 飲もう」



氷が溶けだして炭酸が抜けてしまう前に、そう言えばストローに口をつける◎。彼女に世界だってあげたくなるような そんな気分に俺は口元が緩んだ。




20181231[冬の恋]
よく笑う野坂

波陽様今回も企画参加ありがとうございました!

よく笑う野坂君ー?と色々考えたのですが、こんな風に夢主と一緒に楽しく休日を過ごすのが 彼にとって一番の幸せかなぁと思い書いてみました。

いつも本当にありがとうございます!
2019年もよろしくお願いします!