無垢な季節

冬休みももうすぐ終わる。俺と彼女は付き合っているのに まだ親しい友人から上にいけない、別に無理して関係を進めたいわけじゃないので 今日も静かなカフェで 俺達は好きな本を開いた。

彼女が注いできてくれた氷水がカランカランと綺麗な音を立てる中 俺の注文したホットのカフェオレからはまだ熱々と湯気が上っていた、彼女をちらりと見れば 真剣に本の世界に入っている様子でコップの取っ手を手探りで探している。



「〇さん、右側だよ」

「お恥ずかしい...集中しちゃってて、基山君ありがとう」

「火傷しなくて良かった」



にっこりと 二人で目を合わせて笑えばなんだか照れてしまって、本に目線を落とした。この作家が書く小説は 無駄な心理描写が少ないから感情移入がしやすい、小説の中にいる二人の恋に自分と〇さんを重ねる。

雪解けのような恋をしたいと思ったこともあったが、今は小さな結晶たちが少しづつ積もるような...そんな恋をしてる自分を投影してみれば 世界が一瞬で色付いた。










2杯目のドリンクが底をついた。

彼女の飲んでいた甘い香りのドリンクの匂いももうない、彼女は少しだけ潤んだ瞳を俺に向けて「この小説面白かったー」とひとりごとのように可愛い声を漏らす。



「俺の読んでた方も面白かったよ」

「その作家さん読んだことないから気になるな、今度貸してくれる?」

「それじゃあ 俺も〇さんが読んでた本借りてもいいかい?」



彼女から受け取った本には丁寧に布カバーがされていた。



「今から読み出したらもう夜ご飯の時間になってしまうね」

「本当だね 今日から寝る前に少しずつゆっくり読もうかな」

「少しずつ?」

「基山君のおすすめの本 できるだけじっくり読みたいなって...」



彼女のそんな言葉にドキリと胸が高鳴るのが分かった、俺の本を大事そうに胸元に抱くようにする彼女のそんな仕草は遠くから匂うパンケーキよりも甘くて 照れくさくなる。

そんな甘い時間が妙に恥ずかしくて交換した本を大切に鞄にいれ 俺達はドリンクの置かれたトレーを持ち返却口へ向かった、愛らしい彼女は丁寧にコップを店員の方に滑らせて「ご馳走様でした」と笑う。

彼女のそんな笑顔に店員の男の人が 笑い返す、俺の彼女は素敵だろう。そう言ってやりたくなったけど そんな恥ずかしい事俺には到底できなかった。



「うわー 寒いね...」



ドアを開け 最初に目に入ったものは真っ白な雪、首に巻いたマフラーをぎゅっと掴んで彼女を見れば 少し寒そうに肩を上げていた。



「俺のマフラー使うかい?」

「そんな事したら 基山君が寒いよ」

「大丈夫だよ」

「悪いよ...風邪ひいちゃうし、それなら二人で巻いた方がいいよ」



彼女は自分の言葉の意味を言ってから理解したようだ、薄らと開いた唇から「ごめん...変な事言っちゃって、」と恥ずかしそうな色の声が。



「あの、〇さんが 良かったら一緒に...使うかい?」



マフラーを一度首から離して 彼女のすぐ横に立った、そのまま 俺と〇さんの首にゆっくりと巻けば どうしようも無いくらい 恥ずかしくて俺も頬が熱くなる。



「...恥ずかしいね」

「俺も、」



巻き終わった後 俺達はぎこちなく歩き出す。



「〇さん 苦しくない?」

「うん 大丈夫、でも もうちょっとだけ近い方が歩きやすいかも」

「...手 繋いでもいいかな」



一歩近付いて 彼女の指に触れた。雪が俺達の睫毛を白く染めていく中、温かい先を触れ合わせて 照れくさく笑ってみせた。




20181231[冬の恋]
ひとつのマフラーを二人で使う、プラトニックなお話

ネコナベ様今回も企画参加ありがとうございました!

タツヤ君本読むの好きそうなので カフェで本を読むまったりデートにしてみました!中学生らしいカップルを意識してみたのですがいかがだったでしょうか??

いつもありがとうございます!2019年もよろしくお願いします!