こいぬのわるつ

 冬休みが後三日で終わるから、みんなの部活が始まる前に、部室を綺麗に掃除しようと思い学校へ。
 誰もいないグラウンド、誰もいない校舎を抜けて、誰もいないだろう……と、思っていた部室のドアが少し開いていた。誰が来てるんだろう? 恐る恐る、扉を開けると、真ん丸な目をこちらに向けている立向居君と目が合う。
「あれ〜立向居君! 来てたんだね!」
「おはようございます! 今日は、先輩が来ると聞いていたので、それに……サッカーボールには俺達や今までの先輩方の沢山の思いが詰まっているので……一個一個大切に磨きたくて!」
 寒い部室の中、せっせとボールを磨いている彼の隣に少し離れて腰をかける。すると、立向居君はニコニコと笑って「今日も寒いですねー」なんて、私にとびきりの笑みを向けてきた。可愛いなぁ。つられるように口角をあげ「寒いよねぇ」と、返した。
「……先輩、それじゃ寒いですよね。俺の上着、良かったら使いますか?」
「いいの?」
 見慣れない私服姿の立向居君は自分のかけていた上着を私の膝にかけて、満足気に笑った。
「ありがとうね。それじゃ、ちゃちゃっと部室の掃除終わらせよう」
「ハイ!」
 元気のいいお返事にクスクスと笑うと「なんで笑うんですか?」なんて、キョトンとした彼が私を見つめた。

 ▼ ▲ ▼

 磨き終わったサッカーボールと、綺麗に雑巾がけしたテーブルや床がピカピカと輝く。やり切ったー! と、気持ちよさそうに体を伸ばす先輩の後ろ姿にどきりと胸が高鳴った。先輩の私服姿を中々見る機会がないから、すごく新鮮でドキドキと心臓がうるさい。俺は、ごくんっと勢いよく唾を飲み込んで「あの先輩、この後って時間ありますか……?」と尋ねた。
 俺の言葉に「この後?」と首を傾げる。ポケットに大事に入れておいた映画のチケットを軽く指でつまんで、ポケットから出せば、先輩は不思議そうにそれを見つめた。
「用事はないけど どうしたの?」
「……よ、よかったぁ」
「なによ」
「俺、先輩を誘ってもないのに一緒に行きたくて……映画のチケットを買ってしまったんです」
 俺の言葉に、目をぱちぱちさせた後 先輩は楽しそうに笑った。
「トークで言ってくれたらよかったのに!」
「いや、だってその……」
「何? 恥ずかしかったの? ほら、チケット見せて!」
 ぱしりと乱暴に俺の手からチケットを奪い取り、先輩はマジマジとチケットに書かれた文字を目で追った。
「え〜……この映画、私が観たかったやつ! 立向居君なんでわかったの?」
「えっと、その……こういうの好きかなぁって思って、買ってみました……」
「嬉しいなぁ。ありがとうね、立向居君。それじゃあ、今から出てなんか食べない?」
 ひんやりと寒い冬を吹き飛ばしてしまいそうな程、かっかと熱くなる耳と頬を先輩にバレないように、手のひらで包んで、にやけた顔を隠した。『貰ったお年玉を残しておいて良かった』と、心の中でガッツポーズをする。浮かれてしまった俺は「ポップコーンとか食べますか?」なんて、ちょっと格好悪い事を言ってしまった。そんな自分に頭を抱えると、先輩は「塩とキャラメルどっちも食べる!」なんて明るい声を部室に響かせた。




20181231[冬の恋]
→20211222修正
悲恋以外

舞様 企画参加ありがとうございました!

立向居君初めて書いたので おかしかったらすみません...!お年玉を残しておいて好きな子とのデート代に使う立向居君書けて大満足です、いかがだったでしょうか??

2019年もよろしくお願いします!