真っ赤な恋とサンタ
足に毛布を巻きつけて歩きたいくらいギュッと冷える冬の不機嫌そうな風、私は友達と廊下を他愛もない話をしながら歩く。階段を一段降りればダイスキな及川君の声が聞こえて来た。
冬に似合わない楽しくて陽気で南国のカラフルな鳥みたいな声色の彼は「ごめんね、忙しくってさぁ〜!」なんて謝る気ないでしょって声で誰かに謝っていた。
「ん?及川の声だ、また告白されてるのかな」
「かなぁ」
「モテる彼氏いると大変だねぇ」
ケラケラと茶化す友達の肩を小突く。心配はしてないけれど、気にはなってしまう。私は聞き耳をたてるようにそろっと下のフロアを覗き込んだ。女の子数人に囲まれている及川君はどうやら私たちに気が付いていないようだ。
「えー及川君来ないとつまんないよー」
「高校最後だしさぁ、バレー部の奴らとも付き合いあるから ごめん!」
「バレー部の忘年会うちら呼んでよー」
「可愛子ちゃん達の誘いを断るのってすごく辛いんだよ〜、また誘ってよ 忙しいからもう行くね」
バイバーイ!と彼女達に手を振って振り切って階段を上がってくる及川君。ヤバっと小さく声が漏れる、私と友達は今ここに来ましたよって顔をして階段を一段降りると及川君が目の前に現れた。
「あっ◎チャン」
パァッと明るくなる顔、下からあの子達来たらどうするんだろうとハラハラしながらも私にはそんな顔をしてくれる事に少し嬉しくて恥ずかしくなった。
「◎先に行っとくねぇ」
「もう、その顔やめてってば・・・」
「及川バイバーイ!」
友達はニヤニヤしながら階段を降りていく、2人きりになった私たちは少し見つめ合ってからどちらともなく微笑み合う。
「ヨシッ、上いこう ◎チャン」
「えっ 及川君?!」
「階段気をつけてね」
ハァハァと息を整えていたら「運動不足〜??」なんてうざったい声が耳を擽る、屋上の鍵を開けて及川君は私の手を引っ張って寒空の下に連れ出す。
「さむっ・・・」
「おいで あっためてあげる」
「学校なのに・・・」
「って言いながらさ◎チャンいっつも俺の腕ん中に来てくれるよねぇ、可愛いなぁ」
充電させてと私を抱きしめて私よりも背が高い及川君は私を包み込むようにぎゅーっと丸め込む。苦しいけれど、嫌な苦しさじゃない、私は彼の好きなようにさせてあげようと目を閉じた。きっと購買で狙っていた牛乳パンは他の人に取られてるだろうなぁ。
「よしっ、充電完了!」
「早いね」
「高速充電した」
あどけない笑みを漏らしながらそう言うと力を緩めて私と同じ目線まで体を屈めて「クリスマス、空けてる?」と言う及川君、さっき忙しいって言ってたから今年はクリスマスデートないかなと思っていたから面食らってしまった。
「さっき忙しいって・・・あ」
「さては聞いてたなぁ このー悪趣味だぞ」
「あそこに居たら聞こえてきたの!」
「まぁ、そういう事にしといてあげるよんっ」
楽しそうに笑って及川君は「で、空いてるの?」ともう一度尋ねる。
「一応、空けてるよ」
「よかった〜デートしよう」
「でも バレー部のみんな大丈夫なの?」
「ん?デートしてから一緒にバレー部の集まりに来てまたデートしよう、他にも彼女連れてくる奴いるしさ」
「ちょっと、恥ずかしいじゃんそれ」
「大丈夫だって」
ぐしゃぐしゃと私の髪をめちゃくちゃにして及川君はおでこにキスしてきた。
「ねぇ、学校だからだめ・・・」
「最近忙しかったから 触れてなかったし、キスぐらい許して」
自分の見せ方を知ってる人は厄介だ、私がその顔に弱いのを知っていてわざとらしく小首を傾げて笑いかける。こくんと頷けば及川君はおでこと鼻の頭に軽いキスをした後、私の唇に指を沿わせてから「んー・・・クリスマスの日にしようかな、今しようかな・・・んー、クリスマスまで我慢する」と眉間に皺を寄せた。
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◎チャンどんな服で来るかなぁ、俺的にはニットのワンピースにタイツとかがいいなぁなんて考えながら待ち合わせ場所に向かえばデートの時しか見る事が出来ない巻き髪に薄っすらと化粧をしている◎チャンの姿が見えた。俺に気が付いてホッとした様子の彼女は小走りで俺の所に走ってくる。
「お待たせ◎チャン、ってどうした?」
「ずっと男の人に声かけられてて・・・良かった、及川君来てくれて」
「はぁ??」
パッと彼女のいた所に目を向ければ慌てて走っていく大学生くらいの男。
「ちょっと待ってて」
「ダメダメ、声かけられただけだし 大丈夫だからデートしよう」
「・・・触られてない?」
「うん 大丈夫」
「良かったぁ」
「行こう及川君」
するっと俺の腕に巻きつけられた女の子特有の細い腕、マジで何にもされてなくて良かったと胸をなで下ろして俺たちはとりあえず昼飯を食いにカフェに向かった。
カップルまみれの店内に紛れて愛を囁くような曲が流れる空間で俺達はオムライスとスパゲッティに口をつける、ちいさなテーブルのおかげでこんなに人が居てもお互いの声が聞き取れるから他愛もない話をしながら最近の忙しさを殺すように彼女の顔を見つめた。
「見過ぎ、及川君」
「だって久し振りにこんな至近距離で話せてしかもデートして、この後は・・・とか考えると幸せでさぁ」
「本当に及川君てムード壊す天才だよね」
オムライスを崩しながら少し怒った声のくせに楽しそうに口角を上げる◎チャンにつられて俺も口角をあげた。
「でも、私もデート凄く楽しみにしてたから嬉しい」
「この後どこか行きたいとこある?」
「及川君と一緒にいれるなら何処でもいいよ」
「個室でも?」
「なんて?」
「なんでもないです」
「・・・カラオケか映画行く?混んでるかもだけど」
そう言って俺の靴にコツンとつま先を当てて照れ臭そうに笑う◎チャン。
「後でみんなでカラオケ行くらしいから、映画にする?」
「うん」
「映画なんか観たいのある?」
「今調べる」
そう言って取り出したスマホケースの裏には前のデートで撮ったプリクラが貼られていた、それにキュンと心臓をひとつきされた俺は暴れる心臓を抑える為にほんのりとレモンの香りがする水を飲み干す。観たいものが決まったのか「17時頃に終わるから、みんなとの約束には間に合うね」そう笑って携帯をカバンの中に直す◎チャン。
「映画の前に少し時間あるけど、カフェ行く?」
「そうしよっか」
「そうだ、及川君・・・まだご飯の途中だけど 」
薄々気付いてはいたけれど荷物カゴの中に入れられた小さな紙袋を取り出して照れ臭そうに俺に渡す◎チャン、それを受け取り中身を見れば俺が前から欲しいと言っていたものが入っていた。
「◎チャン、これ・・・」
「及川君と忙しくて会えない間私バイトしてたでしょ、それで・・・」
モジモジと照れ臭そうに瞬きした後彼女は後少しになった冷めたオムライスに助けを求めるようにスプーンを突き刺した。
「待って、俺・・・嬉しいなコレ」
なんだその言葉ダッセェと心の中で自分に毒吐きながら熱くなる頬を手の甲で冷やして彼女を見る。
「ありがと、◎チャン 大事に使うね」
「嬉しい?」
「こんな良いもの貰った後に渡すの恥ずいんだけど・・・はい」
「及川君も用意してたの?嬉しい・・・開けても良い?」
白い袋の中から彼女に似合いそうなマフラーと、薄いけど綺麗な色の口紅の箱を取り出してキラキラした瞳を俺に向けた。
「ありがとう及川君、大切にするね」
「どういたしまして ご飯食べ終わったら、それ塗ってみて」
「うん分かった」
口紅の箱から金色のケースに隠された淡いピンク色をちらりと見て彼女は可愛いと一言呟いた、桜貝みたいなあどけない頬が揺れてあー好きだなと改めて心臓が跳ねる。ちらりと窓の外を見ればちらりと雪が降ってきた。
この後カフェに行って映画を観て、バレー部のみんなと会って、夜はどうしよか。
「早く食べてこれ塗る」
俺の邪まな気持ちに気付くはずもない彼女は左手にギュッと俺があげた口紅を握ってオムライスを食べる彼女の口元をじっと見つめながら、緩む頬を抑えた。
2019冬の恋企画
皐月様、企画への参加ありがとうございました!
及川君、いつか書いたいな〜と思いながら書けずにいたので素敵なチャンスをありがとうございます♪めっちゃ難しかったのでおかしい所ちょいちょい有りますが・・・楽しんで頂けたら幸いです💌
及川君の涙には何度も心臓やられてますが皐月さんはどのシーンが好きですか?また聞かせてくださいね、私は田中君が最推しで青葉は岩泉君が好きです・・・。
寒さ厳しくなってきましたのでお体ご自愛くださいませ!
それでは、これからもよろしくお願いします!