「……!」
部屋の扉が申し訳なさそうに少し開いている。決して閉め忘れたとか、そんなんじゃない。それは私達だけが知る、シグナル。
「…リヴァイ、」
彼はソファに横になっていたが、眠っていた様子はなさそうだった。
壁外調査後負傷者の手当てをしてボロボロに疲れ果てていた私は、それでもその姿を見ると疲れが吹っ飛ぶと同時、酷く安堵してしまう。…分かってる。ちょっとのそっとで彼がその命を賭さないことくらい、分かってる。でも、
「…っオイ、汚ぇぞ」
「知ってる」
「せっかく着替えたのによ…」
口では悪態付きながらも、背中に回った逞しい彼の腕に力が篭るのを感じた。
壁内ではいつもその顔を拝めるが、壁外ではそうもいかない。私はただの一端の班員。彼の近くで任を遂行することなんてまず無い。
だからそう、互いの無事を知るのは壁内に入ってそしてこの兵舎に帰ってきてからの事が大半で。…分かってる。ちょっとのそっとで彼がその命を賭さないことくらい、分かってる。でも、
「…無事でよかった」
ポツリと彼の胸に呟けばこっちのセリフだと言って溜息を吐かれ、私よりも少しだけ背の高い彼の顔が肩に埋まる。
それからは沈黙。何時ものことだ。互いの呼吸音だけを耳に入れる。それだけで、十分だから。
「……ダメだ」
「?」
「やりてぇが、眠すぎる」
「……馬鹿、」
刹那、二人でソファにダイヴする。キツく私を抱きしめたまま、彼は眠りに落ちていった。
「……」
規則正しく上下する胸。それは生きている、証。
私はそっとその胸に手を添えた。会えなかった時間の隙間を埋めたくて、彼のリズムに合わせるように呼吸を開始する。
「…おやすみなさい」
その音を刻みながら、そして私もそっと目を閉じた。
重なる呼吸音に眩暈
(貴方の二酸化炭素で私は生きている)