「レノさんみーっけ!」
そう言って俺の顔に伏せてあった雑誌を強引に剥ぎ取り、眠そうに不機嫌な顔をしているのを楽しそうに覗き込むその女。
あぁ、今日も見つかっちまったぞ、と――
Hide and Seek
そこは神羅ビルのてっぺんにそびえる屋上。70階以上ある神羅ビルは結構な高さであり、そこから眺める景色は辺りを一望できる為社員の中では隠れ絶景スポットと言われている。
そんな屋上のベンチに寝転がり、雑誌を読み更けていたのはレノ。天気もいいし気候もちょうどいい本日は絶好のサボり日和。そんな日は屋上でのんびり過ごすのが一番いいと、…否、彼はほぼ毎日そこに来て寝転がっている。
「またこんなトコでサボって!ツォンさんに叱られますよ?」
そう言ってアイルは取り上げた雑誌をペラペラとめくった。
やっと念願のタークスに配属されたと思ったら最近の仕事はサボっているレノの散策ばかりで、なんてつまらない仕事なんだと毎度毎度思ってはしかし、それも結構大変な仕事だと最近痛感している。毎回同じ場所にいてくれたらいいものの、レノがころころとその居場所を変えてしまうからだ。お前は猫かと言ってやりたいがそんな勇気はさらさら無い。まったく探すこっちの身にもなって欲しいもんだとやはり毎度毎度思うのだが。
「サボってねえよ。休憩中だ」
「随分と長い休憩ですね。って毎回毎回同じこと言わせないで下さい!」
まったくもう。と言ってアイルは雑誌を乱暴にレノに投げ返した。
「アイルも一緒にサボろうぜ」
「誘うな。ちょっとは反省しろ」
「...つれねえなぁ」
「タークスのエースが聞いて呆れますね」
「仕事はしっかりやるだろーが」
「現にしてないじゃないですか」
ああいえばこういう。本当にこの人はProfessionalなタークスなんだろうかと疑いたくなって、アイルは呆れたように一つため息を吐いた。
「早く行きますよ!私までツォンさんに叱られちゃうじゃないですか」
「んーもうちょっとー」
そう言ってレノはアイルに取り上げられてた雑誌をまた広げて顔に乗せる。
それに気づいたアイルはまたもや大きくため息をついてその上からチョップをくらわしてやった。
「ふぐぉッ!?」
まさかチョップが振って来るとは思わなかったレノはビックリして飛び起き、それにアイルも驚いて一歩引き下がった。
「…テメエ」
あ、怒った。顔は笑っているが目が笑っていない。アイルは身の危険を感じて逃げの体制をとる。
「待てコラ!」
「ひゃぁーー!!ごめんなさいーー!!」
叫びながらも笑顔で逃げ惑うアイル。…なんだかんだで本当はこうやってレノと馬鹿して過ごす時間が大好きだった。少しの時間だけでもレノとたわいもない会話をして過ごすことが出来る、二人っきりになれる貴重な時間であるから。
あぁ、神様。今日もありがとうございます。
今日もアイルは幸せです、なんて。
「先輩が悪いんですーー!」
ベーッと舌を出して悪戯に笑ったアイルは扉の方へ足を進めていた。あぁ今日もいい天気だな、なんて思いながら、満足そうに。
「……アイル!」
そうして不意に呼ばれた名。アイルが振り返るとそこには、穏やかな表情のレノがいて。
「?」
「…俺が何でこんなにサボるか知りてえか?」
…そんな事自慢げに言わないで欲しい。わざわざ呼んでおいてそんな事、どうせたいした理由もないのだろうと思った。仕事が嫌なんだろ。要は仕事が嫌なんだろ。そんなのお見通しである為、わざわざ本人の口から聞くまでもなく、
「さっさと行きますよ!!」
そう言い残して、アイルは扉の奥へと消えてしまった。
「…あーあ。せっかく教えてやろうと思ったのによ」
彼女の消えた残像を追うように扉に目を向けたままのレノは一つ息を吐くと、落とした雑誌を拾い上げた。
…それを見つめながら、先ほど楽しそうにしていたその人の笑顔を思い出す。
「……、」
――お前に探されたいんだ。
お前に俺の事、見つけて欲しい。
…お前が俺を、必要としているみたいだから――
「……なーんて、な」
さぁ、次は何処に隠れようか…?