最高の告白の仕方




「長期任務?」

「そ!一週間ウータイに出張なんだ」

「へぇ〜…大変だね」


あからさまに声のトーンが変わってしまった。何てわかりやすいんだろう自分。これじゃまるで――


「何だ?淋しいのか?」

「っばっ?!…違う!!」


心の中を見透かされた気がしてアイルは素っ頓狂な声をあげてしまった。きっと今の自分はもろに顔が赤いに違いない。やだやだ、丸わかりじゃん。本当に自分はわかりやすい。自分でこんなにそう思うんだからきっとザックスだって自分の気持ちに気づいてるに違いない。…そう考えると余計凹んだ。





最高の告白の仕方





ザックスとは神羅に入社した時からの仲だった。気さくなザックスはいつも自分に会うとこうやって話しかけてくれて。いつも明るくて、優しくて、楽しませてくれた。
そんなザックスは当然みんなの人気者。いつも女の子にはキャーキャー言われているモテモテなやーつ。

そんなザックスの事を、いつからかアイルも友達としてではなく一人の男性として意識してしまっていた。その思いは伝えられる事もなく胸の中にいつも閉まってある。こんな自分なんかザックスが好きになるわけない。モテモテなザックスには腐るほど女の子がいるんだろう。自分なんて、相手にされるはずがない。こうやってたわいもない話をして、笑って過ごせるだけで十分だ。…そう、自身に言い聞かせていた。



ザックスとは少なくても二日に一回は会っていた。廊下ですれ違うだけの時もあれば、自身のオフィスにザックスが遊びにくる事だってあった。
それが、今回は一週間も会えなくなってしまう。それにあからさまに反応してしまった。あぁもう、馬鹿だな自分。ガッカリしてるの丸見えじゃん。もう、時間を戻せるなら戻したい――


「なんだよー素直に淋しいって言え!」

「淋しくなんかない!寧ろせいせいするね!」


ああ、なんでそんな事言ってしまうんだろう。そんな事これっぽっちも思ってないのに。可愛いくない。全然自分可愛いくないや。こういう時普通の女の子なら淋しいって素直に言うのだろうに。


「俺は淋しいぜ?アイルに一週間も会えなくなるんだからよ」

「!?」


…なんでそんな事言うんだ。アイルは驚きの顔をザックスに向けた。
そういう事を平気で言うんだこの男は。ケロっとした顔でキザなセリフをヤスヤスと。女の子慣れしてるなやっぱり。これが世で言うチャラいってやつか。こっちの気もしらないで。


「そーゆーの、他の女の子にもどうせ言ってんでしょ!」


アイルは大きくため息をついてそう言った。そんな事本当は言いたくなかった。けれど、それは事実だと思う。自分の気持ちを弄ばれてる気がして、なんだか腹が立つ。…いわゆる嫉妬ってやつだ。


「何怒ってんだよ?」


ごもっともです。果たして自分は何に怒っているのだろう。ザックスが長期任務に行く事か。自分が淋しい思いをしてしまう事か。ザックスに気持ちを見透かされた事か。ザックスが自分を見てくれない事か。ザックスが自分の気持ちを馬鹿にした事か。ザックスが、…ザックスが――


「…もういい」

「アイル?」

「ザックスにはわかんないよ」

「何が?」

「…もういいってば」

「なんだよ?気になるじゃん!」

「気にしてろ!そうやってずーっと気にしてればいい!」


そうやって、自分の事ずっと気にしてくれたらいい――

なんだかアイルは泣きたくなってきた。


「ははーん。アイル…嫉妬してんの?」

「っ!?」


またあからさまに言うなコイツは。ちょっとは空気を読めっつの。アイルは怪訝な顔をザックスに向ける。嬉しそうにニヤニヤしてるザックスに、アイルは多少イライラし始めていた。この状況を楽しんでやがる。タチのわるい奴だ。確信犯か、はたまた純粋なだけか。
そうしてその眼を見れば、その瞳はさすが子犬のザックスといわんばかりにキラキラと輝いていて。…あぁ、純粋な方だ。とアイルは思った。しかしそれも逆にタチが悪い気がする。

そうしてその子犬を遠ざける様に、アイルはあからさまに不機嫌さを醸し出した。


「さっさと任務に行ってしまえ!!このチャラ男!!」


アイルはそれだけ言って部屋を飛び出した。
…なんでこんな事になってしまったのだろう。それにしてもひどすぎるじゃないかザックス。どれだけ人の心を弄べば気が済むんだ。そんな自覚がない事はあの瞳から容易に想像できるが、なんだか納得いかない。これだからモテる人は困る。なんであんな人好きになっちゃったんだろう。馬鹿馬鹿。自分の馬鹿――


「……っ」


アイルはエスカレーターを自らの足で進んで降りていった。ヤバイ、泣きそうだ。もうどうしてしまったんだ自分。こんなの、自分らしくない。

…こんなにも、ザックスの事が好きなんだ。気づいてしまった。ザックスを他の人に取られたくない。ザックスの笑顔は自分だけに向いていて欲しい。…独占欲。叶うはずのない独占欲が、自身の心を締め付けていく――


「――っアイル!!」


その時。
知った声が、大きな声で自分の名前を呼んだ。


「…?」


しかし振り返って辺りを見回してもその声の持ち主はどこにも見当たらなくて。…なんだ。空耳か。やけに大きな空耳だった事。こうやって空耳でも自分を弄ぶのか。最低。もう振り返ってやるもんかと思っていると、


「アイルってばー!!!」


それは上から聞こえてきた。咄嗟に振り返ってしまったアイルが見たのは、二階から自分を見下ろしてるザックスの姿。


「俺はお前しか見てねえぞー!!」


エントランスにその声はよく響いた。それに驚いた通行人達が一斉にザックスを見やる。…いや、それよりも、重要な事。


――…彼は今、何と言った?


「俺が好きなのは、お前だけだアイルー!!」


ザックスが見つめる視線の先を追って、通行人達が自分に目を向けるのが嫌でもわかった。


「っ…、」


そしてハッキリとその言葉はアイルに届いていた。…というかこんな公共の場でなんて事を叫んでいるんだ。そっちの方が今は大きい。大注目の的になっているでないか。
アイルは自身の顔が余計に赤くなるのを感じていた。


「ばっ!!馬鹿ザックス!!こんなところでそんな大きな声で…冗談でもタチ悪いっつの!!」


ほんとに自分はおちょくられている。やっぱりアイツは確信犯だ。アイルはそう思った。…否、そう思う事でしか今の自分を抑える事が出来なくて。


「任務から帰ったら覚悟しとけよー!!」


ザックスはいつも通りの笑みを浮かべていた。そして大きく手を振って、あっけなくその姿を消してしまった。


「……」


…なんだか本当に冗談な気がするのは自分だけか。え、なんだこれ。一週間もこのままで放置とか地獄すぎる。


そうやって、自分の事ずっと気にしてくれたらいい――


先ほど彼にそう思った言葉。…逆に自分がそうなるハメになってしまった事に気づいたアイルは、逃げるようにその場から立ち去った。


…そして、地獄の一週間が始まった――



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