3


運命の書を拾い上げる。彼女だったものが風に攫われて、床を滑るのを横目でみていた。これで、終わりだ。私の役目は終わったのだと、動かなくなったラジオを抱え直して目を瞑った。承太郎達の元へ戻ろう。遅れてやってきた私に彼らは少しだけ怪訝な様子を見せていたけれど、背後に眩む朝日を浴びて、長く続いた死闘の旅に決着がついたことに誰もが息を吐いた。

多くの犠牲があった。ジョセフさんがそう言って、まざまざと脳裏に焼き付いたあの光景が蘇る。花京院が死んだ。彼の最後の力が時計塔を破壊した時、確信せざるを得なかった。花京院は、死んだのだ。彼だけじゃない。アヴドゥルさんも、イギーも。隣に立つポルナレフの拳に込めた力が痛すぎるほど伝わってきて、息が詰まった。この旅の犠牲は、あまりにも大きかった。承太郎が帽子のつばを引いて、彼の顔に影をつくる。

スティール。もうラジオからは何も聞こえない。運命の書を取り戻した時、私は私自身の役目が終わったことを悟った。この旅の目的は果たされたのだ。この旅の目的。ホリィさんの命を救うこと。その為に、DIOを倒す。けれどあのとき、私はなんと言っただろう。旅の始まり。全ての始まり。目的なんかじゃあない。理由だ。成り行きに任せて居合わせた私が、どうして命をかける旅に同行しようと思ったのか?運命を決めたあの決断は何だったのか?ーー決断の末の結末は、これで良かったのか?

いい訳がないのだ。彼らが死んでは、意味が無いのだ。私は何の為に同行した?私の役割は何だ?運命の書の悪用を阻止すること?DIOを倒し、ホリィさんを救うこと?間違いじゃあない。けれど、己の奥底を揺らめく力が、スタンドが叫んでいる。ラジオの声を聞いたあの時、大きな鼓動と共に目紛しく変化する運命が、己の使命を響かせる。輝きを失った彼らを、もう二度とみたくないのだと!


空港で別れを告げ、歩み始めた彼らは知らない。彼女のその瞳に宿った、決意の輝きを。




- determination - ( かみが わらった。)

back
ALICE+