カルデアの大浴場は残念な事に、混浴である。一番誰も使わない深夜の時間帯を狙って、美月はお風呂セットを手にし陽気に鼻歌を唄いながら廊下を歩く。
「ふふん、今日はメイヴちゃんから新しいボディソープ貰ったから使わなきゃ」
メイヴちゃんとガールズトークをした時に、女の子なんだから少しくらい良い匂いがしたって良いのよ!とメイヴちゃん愛用のボディソープのお試し用の小袋を押しつけられた。
ガラリとドアを開けて、服を脱ぎお風呂セットを手にし湯気が立ち込める大浴場へと足を踏み入れる。
シャワーのノズルを回し、温かいお湯が身体の汚れを落としていく。ボディソープを手に取り泡を立てて身体を包んで、そして流し終わる。
待ってました浴槽へと肩まで浸かり、大きく息を漏らす。
「気を張りすぎてるのかな。でもマスターである私がしっかりしなくちゃ皆に示しがつかないよ…」
誰も居ない事を良い事に盛大に独り言を呟く。
「凡夫ながら頑張っていると我は思うがな」
離れた所から声が聞こえる。この湯気で、この無駄に広い大浴場だ、誰か入っていてもおかしくないと言えばおかしくないが、深夜の丑三つ時も過ぎた深夜に私以外誰が大浴場に居ると考えるのだろうか。
だがこの皮肉を含めつつも褒めているのが憎むに憎めない。湯気の向こうに居るのは、
「ギルガメッシュ…?」
「なぜ疑問に思うところがある。玉音くらい聞き分けぬか雑種」
あはは。と誤魔化すように笑っていたら、下を一切隠そうとしないキャストオフした王様が湯に波を立てて近づいて来たのだ。言うまでもなく悲鳴を上げた、無駄な事だと知っていたが頭に乗せていたタオルで身を隠す。
「喧しい!浴室は響くのだ、大声をあげるでない!!」
と怒られたが、隣に座ってタオルを目に当てて湯船に浸かっている。
「お、王様こんな深夜にお風呂入るんですね」
「む?我とて湯浴みくらいはするぞ、些か日中は人が多いのでな。こうして深夜の時間に来たら貴様が入ってきたのだが?」
「うぅ…?王様お酒入ってます?」
湯気と共にふわり、とアルコールの匂いがやってくるがそれは紛れもなく隣の男性からだ。
「貴様から熱い視線を送られ続ければ、我とて照れるではないか」
タオルを目から取り見つめられるが、完全に酔いが回ってる。だめだ、全く会話になってない。
艶っぽい声が幾つも降ってくる。お酒に酔ってる酔ってるんだと、言い聞かせて先に上がるために身体を布一枚で隠し浴槽から上がる。
「フハハ!貴様が初々しい反応ばかりするものでな、つい興が乗ってからかってしまったではないか!」
浴槽の方で騒いでいる王様の声に反応したのか、脱衣場に戻ってもまだ顔が熱い気がする。
たまには呑まれる
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