自分の身体を支えている指先の感覚が無くなりつつある。
頼りなのは私の指先の力、腕力、それと片足のつま先が少しだけ乗せれる小さな窪み。小さな窪みは足をずっと乗せていると崩れそうで、足よりもこれは指先との勝負だと思っている。

私の身体は崖に投げ出されていた。強化素材を集めに山に来たのだが、運悪く通信は途絶え、大量のエネミーに囲まれ苦戦していた。令呪は昨日で二画使い残り残り一画、使い所を間違えないために残してある。せめて令呪がきちんと回復してから素材集めに行くべきだったと、レイシフトする前の私に言い聞かせてあげたい。

「美月!!あと何分持つ!」

泣きそうになった時、本来助けに来てくれるべき人の声が私から少し離れた所で聞こえた。

ファラオ(神王)であるオジマンディアス、今日は彼とレイシフトしていた。だが、悪運も悪運エネミーを倒しても次から次へと虫のように湧き、ファラオも私も魔力温存のためにエネミーから身を隠していたが、数分前見つかり迎撃しつつ逃げ道を確保しつつ進んでいたが私が崖に気付かず足を滑らせ落ちたのだ。

「ファラオ!限界が近いで、す!!」

美月の足元、遥か下は流れの激しい川落ちたらひとたまりもないが指先の感覚がもう殆ど無い。こうなったら宝具解放した方がいっそ早い。

「令呪をもって命ず!オジマンディアス、宝具にて敵を一掃せよ!!」

声を張り上げた事からジリジリと指が地面と離れていく、その時変な力が入ってしまったのかつま先をほんの少し乗せていた窪みが崩れ、手が、指が、崖から離れた。

あ、死んだ。
人は死ぬ時世界がスローモーションに見えるのか、落ちていく美月は姿が見えないのを分かっているがファラオに手を伸ばす。

「美月!!」

その時、崖から形振り構わず、ファラオが飛び降りて来るのが見えた。落ちていく美月に追いつき抱え、そのまま宙へと高く浮くとファラオは杖をエネミーの固まりに向ける。

「光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)!!」

眩い光に包まれ手で目を覆う。光が消え去ると安全を確認しファラオは地に降りる。

足場が不安定な所に居たせいか美月の身体はフラつき、ファラオの身体に支えられる。見上げると、ファラオの頬に土埃が付いてるのに気づき手を伸ばす。

「む?少しばかり手間取った事は赦せ」

「大丈夫です、怖かったですけどファラオはきっと助けてくれるって信じてましたから!」

にかっ、と笑うと髪をワシャワシャとされ。お互いボロボロの姿を見て笑いあっていると、通信が戻りマシュの心配の声が山の中に響き渡った。



信じているから
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