夜中にふと目が覚めた。
何かを求めるようにベッドを降りて、靴も履かずに廊下へと出る。廊下は照明を最低限は点けているものの薄暗く、各々の部屋で起きている人は居るかも知れないが、防音に関してはきちんと設備が整えられており静まり返っている。

夏場だというのに暑さより寒さを感じるのは、空調の効きすぎなのか、それとも標高6000mにもある吹雪が滅多に止まない見知らぬ土地だからなのか。

うつらうつらと足が動く方へ本能が欲する方へと足を動かし、何か温かい物に抱きついた記憶と共に、再び夢の中へと意識を手放した。


─────


誰かが優しく頭を撫でてくれる感覚が心地よくて口元が緩む、暫く目を覚ましたくないと美月の瞼は少し開いたが綴じる。寝返りをすれば、ふんわりと温い何かに身を包まれる。

「ハッ!実に愛いが、ファラオであるこのオジマンディアスの寝具に無断で侵入するとは、とんだ不敬者よなあ美月」

遠くで誰かが話しているのが聞こえるが、今日は一日オフな事だし、もう少し寝かせてほしい。

頭を撫でていた手が離れていくのが分かり、頭をそちらへ傾けと擦り寄ると、再び撫でる感覚が戻り眠気が波のように襲ってくる。

「これでは赤子同然であるな!故にこのままでは余が寝れぬではないか!ええい…いい加減起きぬか!」

「むにゃ……んー?ふぁら、お?」

あれ、どうして私のベッドにファラオであるオジマンディアスが居るのだろうか。ああ!そっかきっとこれは夢だ、こんな素敵かつ不敬な夢を私は見てしまっているんだ。レイシフト疲れが夢にまで出てきたんだきっと。

「ふぁらお、あったかい…」

「ハハハハ!当然であろう!そして貴様未だに寝惚けているな!?」

寝惚けている?ファラオは何を言っているのだろう。これは夢なのに、リアルな夢もたまには見るのに…。

腕を懸命に伸ばして目の前に居るファラオにぴたりとくっつき、心地よい温かさを求める。

あ…夢だもの少しくらい我儘になってもファラオは怒らない、よね?

「ふぁらお?ファラオ、だいすき」

ふへへ、と目を開けずに口元だけ笑みを浮かべ。普段中々口に出来ない事を眠さの中何とか口にする。

「フッ。貴様そういうのはきちんと余の目を見て言う言葉であろう…。全く、寛大な心の持ち主のこの余だから赦すのであるからな?時にこの寝惚けたマスターには、起きた際には仕置きが必要であるな」

そう言ってオジマンディアスは口元に笑みを浮かべて、隣で幸せそうに眠る美月の顔を見ながら眠りについた。



夢中遊行
戻る