エイプリルフール。
四月一日のみに開催される大イベント、嘘をついても良い日とされている。
今では嘘をついていいのは午前中で、午後はその嘘のネタばらしなど色々ルールがある。
そんな事を皆忘れてシミュレーションルームを春モードへと切り替え、桜が見事に咲き誇る。お花見ルームで宴会のようなものが開かれていた。
上を見上げると綺麗な青空、横を向けば近くには桜の大樹がありそよ風により桜を散らしている。
「本物の桜みたい。あはは、みんなたのしそー」
草原に寝転ぶと、少し離れた所でみんなの楽しそうな声が耳に入ってくる。あっノッブ誰かに怒られてるな…。
「そういえばギルガメッシュ王は、どこに消えたんだろ」
ぶわっと起き上がり、サーヴァント達の宴が開かれている中心から端を見るがギルガメッシュの姿は無い。もしかしたら、こういうお花見とかは好かないため自室に居るのかもしれない。
「せっかくのお花見なのに…」
「阿呆が、上だ」
声が桜の方から聞こえてくる、もっもしかしてこの桜の大樹がギルガメッシュ王なの?!
桜の大樹にくっつき、声がした方を見ると上の方に誰か居るのが見える。
「ん?…あっ!ギルガメッシュ王あんなところに!」
太い幹に腰を下ろし、一人手酌にて特等席で桜を楽しんで居るギルガメッシュを美月は発見した。
するとギルガメッシュは幹から飛び降り、美月の近くへと着地する。お酒が入っているであろう陶器を私に渡してくる。酌しろと言うのか…!
隣に座り、空になったお猪口を美月に向ける。
「みんなと向こうでお酒呑めば良いのに」
「花見は良いが、馬鹿騒ぎには付き合いきれぬ」
とか言いつつお花見するって言う情報はしっかり知ってたんだなぁとニヤニヤ笑う。それに気づいたギルガメッシュが怒ったのか、美月に渡していた陶器を奪いお猪口と一緒にバビロンである宝物庫に投げると、美月の膝に頭を預けて横になった。
「へ…ギルガメッシュ王?」
「膝くらい王に貸しても罰は当たらんぞ」
いや、そういうことじゃなくて…。と言ってもこの我儘な王様には何言っても通じない。諦めて目を綴じて寝ているのか分からないギルガメッシュの髪を優しく撫でる。
「ギルガメッシュ王…今日ってエイプリルフールって言って、午前中だけ嘘ついても良い日なんですよ」
聞いてるか分からないけど、美月は一人はポツリポツリと話し始める。
ギルガメッシュの言葉を待つが、規則正しい呼吸音が返ってくるだけだった。ね…眠った!?この状況でこの王様寝てるのか!?
「まだ午前中…。じゃあギルガメッシュ王に一つ嘘つきます。不敬をお許しください」
きっと見てないけど、ぺこりと頭を下げて頭上に桜を見上げて口を開く。
「…き」
小さく口にする言葉は、きっと王様には届かない。こんなの嘘でも何でもない、ただの私の想いに過ぎない。
「すき、ギルガメッシュ王が大好き」
えへへ、と笑って下を向くと寝ていたと思われる人の目が開いてるじゃないか、え?え?
「はぁ………手間のかかる雑種よな」
そう言うと、ギルガメッシュは徐ろに起き上がり、慌てている美月を軽く小突いてその動きを止める。
小突かれた所を片手で押さえていると、ふとギルガメッシュの顔が視界いっぱいになったと思ったら、次の瞬間唇に何か柔らかい物が数秒触れてゆっくり離れていった。
「貴様の嘘は聞くに絶えぬ、黙って我に膝を貸して桜でも見ておれ」
「えーっ!?」
下手な嘘
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