エイプリルフール。

四月一日のみに開催される大イベント、嘘をついても良い日とされている。
今では嘘をついていいのは午前中で、午後はその嘘のネタばらしなど色々ルールがある。

そんなこんなでカルデア内では嘘つき大会のようなものが開かれていた。

優勝者には賞品があるとかで、色んなサーヴァントが大会に参加していた。

「ふぁーらおっ!」

そんな嘘つき大会の様子を眺めているファラオ、オジマンディアスに抱きつく。隣で大会に参加したそうに、ソワソワしているニトクリスに驚かれる。

「おっおはようございます、同盟者」

「おはよ!ニトクリスも参加してきたら…?」

ファラオ・オジマンディアスの顔を窺い、口元に笑みを浮かべ了承の意味をファラオが送ると、ニトクリスの耳は嬉しそうに左右に揺らし、嘘つき大会の参加をするために小走りで向かって行った。

「ファラオは、こういうの興味無いですか?」

「余は嘘は好かぬ、故に見ている方が性に合うのでな」

壁に寄りかかり、保護者面をするファラオの隣に立ち一緒に嘘つき大会の様子を見る事にした。本当は参加したかったけど、ファラオが参加しないのなら参加しない。元よりそのつもりで来た。

「嘘は嘘でも傷つかない嘘ですよ」

「ほう、傷つかぬ嘘か…それなら多少はまともな大会であるのだな!」

そうです。とニカッと笑うとファラオが不思議そうにこちらを見てきた。急にその整った顔で見てくるものだから、目を逸らして何も無かったかのように嘘つき大会へと目を向ける。

「参加しに来たのでは無いのか?余に付き合わなくて良いのだぞ?」

「いっ!いいんです、ファラオとお喋りに来たので…!」

そうか。とファラオが言うと会話が終了してしまった。ああ!私のバカ!お喋りに来たのなら話題を自ら出さなくてどうするんだ!!

そんな小さく葛藤する美月の様子に気づいたファラオが、ツンと指先で美月の頬を触れる。

「??…ふぁらお?」

「大会には参加せぬが、余が此処に小さな嘘つき大会を開いてやろうではないか」

そう言うと美月の周りには見えない花が飛び散る勢いで、喜んでいる。

「ほれ、美月よ。余に貴様の嘘をみせよ」

本来は楽しい嘘つき大会なのだが、このファラオであるオジマンディアスが口にすると、違う意味合いに取れるのはどういうことだろう。

「そ、そうですね。じゃあせっかくファラオが開いてくれた大会ですし…とっておきの嘘ついちゃいますね」

「うむ、聞かせるが良い!」

心が締めつけられるような感覚になるが、こんな日でないと口に出来ない言葉を私は胸に秘めていた。

それを今目の前に居るファラオに口にする。

「大事な言葉なので、少し屈んでくださいファラオ」

そう言われ、ファラオは美月が耳打ちしようとしているので少し体勢を下げる。

「ファラオ…だいすきです!」

耳打ちすると恥ずかしそうに、ファラオから数歩離れ頬を赤らめてにこやかに笑う。

「美月…今の言葉は…」

「その先は、しー。ですファラオ。今のは私のとっておきの嘘ですから!」

そう言って笑う美月は、まるで泣いているように強く笑っていた。



上手な嘘
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