カルデアではマイルームに一人お気に入りサーヴァントを置く事が出来る、美月はファラオであるオジマンディアスを設定して日々過ごしている。初日にはベッドがいつの間にか天窓付きのビッグサイズのベッドにすり替わっていたのは良い思い出だ。二人で寝るのには少し大きめだが、丁度良いサイズと言った所であろうか。

朝の自主練から部屋に戻った美月は、静かに寝息をたてて眠っているオジマンディアスの頬に優しく指先で触れて、汗を流しにマイルームに備え付けられているシャワー室へと向かう。


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髪の毛に多少残った水気を拭き取りながら、シャワー室から出てくる。するとベッドの上で目を覚ましたばかりのオジマンディアスと目が合う。

「おはようございます、ファラオ」

「うむ。今日も朝から鍛錬とは精が出るではないか」

オジマンディアスは身体を起こし、ベッドの縁に移動し寝る前に外した装飾品の数々を身につけていく。

鏡の前に立ち、傷だらけの皮膚に少しため息が出る。キャスタークラスのサーヴァントに頼めばいつでもこんな傷跡消せてしまうのに消さないのはきっと今まで戦い抜けてきた事を消したくないからだろう。

いや消したくない。だが、この年頃の女の肌に傷だらけというのは女子力の微塵の欠片も無いときた。

「今度、ニトクリスにでも言って少し消してもらおう…かな」

まだ服は着ておらず、上は先程のタオルで胸元を隠し下はショーツにショートパンツ。ああ…本当に女子力無いとはこういう姿から言うのかも知れない。

そして何度目かのため息で気づいた、いつの間にかオジマンディアスが近くに来て美月の肌の傷跡を見ていた。

「貴様もよくこれだけの戦いをくぐり抜けてきたものだ…実に美しいものだ」

「ファラオ。傷跡は美しくないですよ、こっちの世界では私くらいの女の子は寧ろ綺麗な肌お洒落には夢中で…傷跡なんて残ってたら一生の恥みたいなものなんですから…」

そうは見えぬがな、とファラオは美月が見えない背中の方の傷を指先で触れる。シャワーの温度が高かったためかファラオの指先は少し冷たく変な声が出た。

「んっ!」

「む、冷たかったか?なあに、背中には余り傷が無いものでな…」

「ふぁっ、ファラオとか英雄王とか…みんなが守ってくれるから変な攻撃以外は受けてない、はずなんですけど。守られてばかりだと性に合わない?んですかね、隣で戦いたくなっちゃうんで、この様です。あはは」

笑ってみせたが少し悲しい。オジマンディアスが美しいと言った肌は私が馬鹿やらなければ元々受けない傷が殆どだ。マスターは後ろで守られてばかりなんて私には耐えられない、サーヴァントが傷ついて戦うのだから私だって可能な限り一緒に戦いたい。

「貴様らしいな。美月、貴様を守るはサーヴァントとして当然である。だがそれだけではなく余は純粋に貴様に傷ついては欲しくないのだ、分かるか?」

「はい。……はくしゅん!」

服を着ないまま話し込んでしまった。急いで洋服が入っているケースから服を探す。

するとつつーっと、再びオジマンディアスの冷たい指先が背中に触れ驚きの余り再度変な声を出した。振り向こうとする前に、背中の方で何かが触れてリップ音が聞こえた。それがすぐにオジマンディアスが美月の背中にキスしたものだと分かり、服を急いで着て振り返る。

「ファラオ?!」

「なぁに、一種の呪い(まじない)だ」

「の、のろい?!」

ファラオは満足気に笑っている。キスされた所がくすぐったく感じて、意味無いと分かっているがオジマンディアスを必死に睨んだ。



呪い
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