マシュもまさか攻撃しかけたのが美月だと知らず、驚きを隠せず私に謝ってくれた。

「せ、先輩が二人?どっドクターこれはいったい」

不思議な事にマシュは敵の魔術師が手首に付けている、私と同じ通信機のようなものでドクターと通信を取っている。

「これは驚いた、正直美月ちゃんをここまで完成度高く魔力数値、バイタル数値まで同じ敵が居ることに」

声はこちらにまで聞こえるようにスピーカーにされ、敵の魔術師ではあるが通信をする事出来て良かった。

安堵するも束の間、敵の美月は私を指してドクターにこう言う、

「今回の謎の特異点の原因は、目の前に居る私のせいなんじゃないですか?」

「確かに、美月ちゃんの言う通り。美月ちゃんは一人しか存在しない、だからこの現代2015年のこの日本に美月ちゃんは二人は要らない、だが先程から目の前の美月ちゃんを調べているが聖杯を所持している訳でもなくて、至って普段の美月ちゃんと変わらないんだ」

は、話が大きくなってる…。

「ドクターちゃんと調べてる?だって、こっちの私はサーヴァントを一体も持ってないように見えるよ?」

やばい。痛い所を突かれた。
敵の美月は私とドクターを話せるよう通信を音声のみから映像化に切り替える、私はドクターとようやく顔を合わせる事が出来て少し涙目になりかける。

「こほん、失礼キミは一体何者だい?」

「私は仁志美月です、ずっとドクターとも通信が出来なくてサーヴァントを召喚しようにも途中で何かに魔力が掻き消されるんです」

ドクターが私の言った言葉に頭を悩ませ、隣に居たダ・ヴィンチちゃんと代わる。

「やほー美月ちゃん!うわ、本当に美月ちゃんが二人も居る!それにどこまでも似てる!やばい」

私と敵の美月を見比べて、ダ・ヴィンチちゃんは大いに喜んでいる。

「レオナルド!邪魔しに来たなら向こうで美月ちゃんの存在証明していてくれ」

「ぶーケチだなロマニ。まあふざけるのもこの辺にして、キミは美月ちゃんをどうして攻撃したんだい?」

「レイシフトしてすぐに、攻撃されたからです。その時からずっとサーヴァント召還しようとしてますが、敵の攻撃は魔術師によるものだと判断し、ガンドを撃ちました」

なるほど。とそう一言残すとダ・ヴィンチちゃんも黙ってしまった。

「どちらかが本物でどちらかが偽物の先輩なんですね」

後ろの方でしょんぼりとしたマシュと目が合う、が逸らされ敵の美月と楽しそうに話している。

今のマシュからしたら私は敵って事になるのかな。

「そ、そうだ!レイシフトする前にイシュタルから宝石を沢山貰って来たんです」

証拠となる発言をして、この気まずい状況をどうにか打破したい。それを聞いた敵の美月がニヤリと笑った気がした。

「ええと、美月ちゃん。キミは今英霊イシュタルから宝石を貰った、と発言したね?」

ドクターが私に質問をする。私は間違いないのでコクリと頷く。

「美月ちゃん、残念だがキミはイシュタルは召喚していないよ」

「え?」

その言葉にイシュタルの部屋に行って、楽しくお話した記憶が消えていくような感覚に襲われた。じゃあ私は誰に宝石をこんなにたくさん貰ったのだろうか。

自分の記憶がおかしいのか頭を片手で押さえ、少しよろめく。

すると敵の美月がこちらを見る。

「残念だったね、敵の魔術師さん」

私に向けられたその笑顔は紛れもなくどこか歪んでいて、明らかに違うソレに従おうとするマシュもまた、先程の私の発言で偽物と決めたのか戦闘体勢に戻る。

「すみません、偽物の先輩」

盾が振り下ろされる、マシュが多少ながらマスターである私を攻撃するのに躊躇してくれてるのか、表情は少し悲しそうに見えた。

「待て、雑種」

今振り下ろそうとする、美月とマシュの盾の間にたくさんの金色で視界がいっぱいになる。




破鏡2
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