カルデアの廊下にて技術スタッフから衣類の入った袋を受け取る、粗方説明はされたが殆ど聞いてない。寧ろこの服を早く本人に着て欲しくて仕方ない、で頭がいっぱいなのだ。

技術スタッフと別れ、袋を握り締めて、とあるサーヴァントの部屋に足早に入っていく。

「王様ー!たーのもー!!」

「昼間から騒々しいぞ雑種!」

言わまでもなく英雄王ギルガメッシュの部屋である。ベッドの上にて優雅に目を閉じて寝ている王様に対して美月はキラキラと輝き袋を前に突き出す。

「王様…の、霊衣です!ちょっとこれ着てシミュレーションルームに来てください!いや、今すぐここで着替えてください!!」

フンと鼻で聞かぬフリをして、寝返りをするギルガメッシュに対してニコニコと笑顔が消えない美月はそのままギルガメッシュに袋を突きつけたまま首を傾げる。

「令呪をもって命ず、アーチャーギルガメッシュ今すぐこれに着替えてシミュレーションルームに付き合って!」

「貴様ッ(無駄な事に令呪を使うな)…!!」

ぴかーと光る令呪に勝ち誇った笑みで、ベッドから渋々と出てくるギルガメッシュに素敵な笑顔を向ける。

「いたいれふ、おうはま(痛いです、王様)」

袋を取るのは良いけど、両頬摘まなくても良いのに!どれだけ私と遊びたくないんだ…いや、これは遊びじゃない。


─────


数分後、ギルガメッシュが着替え終わり美月の前に現れる。その姿を見た美月は鼻血を出して即床に倒れた。

「尊い…!技術スタッフに作ってもらって正解だった…」

試作だが軍服の霊衣を技術スタッフに作ってもらい、王様に着てもらったのだ。黒にして良かった良かった…。似合うのがまたやばい。

「我の部屋を血で染めるでない、些か窮屈な霊衣ではあるがこれはこれで良いな」

「ですよね!!…あうっ!」

良いな、の言葉にガバッと起き上がり軍服を着ているイケメンサーヴァントに心を撃たれ再度床に倒れる美月。

「霊衣の再度調整もあるのであろう?シミュレーションルームにて戦闘を手早く済ませるぞ、雑種」

半死体のような口のニヤけが止まらないマスターを脇に抱え、シミュレーションルームへとギルガメッシュは向かう。廊下を歩いている途中マシュとすれ違い、ぐったりしている美月を心配そうに見てきた。

「えへへ、マシュ。王様やばい…先月言ってた軍服の霊衣の試作が完成して…死にそう……あ、マシュちょっと王様パシャっとしといて」

「え、英雄王失礼します…!」

すると血を大量に流し、ぐへへと二頭身になっていた美月が脇からすり抜け元に戻り、マシュの持つカメラに笑顔を向けてギルガメッシュの隣に立つ。

「ありがとマシュ!!写真任せるね」

グッ、と親指を上げてマシュを送り出し廊下を再び歩き始める。令呪が働いているためギルガメッシュも仕方なく美月に付いていく。

「この霊衣を貴様が考案したのか」

「えへへ、もちろんですよ!ファラオは褐色肌だから白が良いかなーとか…いっつも重い鎧とか普段の服よりも気分変わるかなーなんて」

「それと貴様の趣味も混ぜて、か」

腰のベルトに挟まっていた鞭を取り出して、美月に素敵な笑顔で見せる。

「痛いくらいが丁度良いだろう?」

その瞬間シミュレーションルームに着き、美月は恐怖の声を上げて逃げていく。次いで鞭が振り下ろされ美月は軽々と避ける。

「ドSの軍人さんは求めてないですー!」

シミュレーションルームからマスターの悲鳴と高笑いしているサーヴァントの声が聞こえる。なんてドクターの耳に入るのは数分後。



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