この特異点に来てからというもの、目立つ建物と言えばこの遊園地。この時代に此処に遊園地が建設される予定は無かった。

美月は屋上を後にすると、微弱な魔力を感知し遊園地に足を運んでいた。

「まさか、レイシフトで遊園地に来る事になるなんて」

遊園地内は至って普通にに友人で来ている人や、恋人や家族連れで楽しんでいる人で溢れ返っている。

チケットを買いに販売券の方へと行く、お客さんに紛れ列に並んで自分の番になって気づいた。私はレイシフトをする際にお金を持って来ていなかったのだ、こういうのはマシュが気を効かせて財布を出すのだが、困った。

「お客様、どうなさいますか?」

「え、えっと…」

困ったままでいると、後ろの人にも迷惑になるため断ろうと口を開いた瞬間、

「あ―「大人二枚、で良いのか?」

脇から手が伸びて、販売券のメニューにある大人の項目を指してお金を受付の人に差し出す。

「こちらになります」

券を受け取り、人混みの中誰かが手を引いて美月を引っ張る。そして人混みを抜けて、太陽の光と共にその人の顔がようやく見れる。

「え、どうして…」

その人は太陽の光を良い事に味方につけ綺麗に輝き、先程まで金色の鎧を身にまとって居たはずなのに、今は普通に他の人と変わらない衣類を身に付け、美月の手を掴んでいる。

口を開こうとするが、そのままチケットを持った彼は美月の手を離さず遊園地のゲートを越えて歩いて行く。

頭が状況を理解出来ず、手を振り解く。するとようやく彼が事態に気づいたのか振り返る。

「ギルガメッシュ、どうして貴方がここに、私の手を取って…どうして…」

「フハハハ、やはりな…!その腑抜けた顔、今にも泣きそうな顔……我以外は騙せても貴様が本物であろう?」

そう言うとギルガメッシュは手を美月の頭の上へと乗せ、乱暴ながら優しく髪を撫でた。くすぐったくて涙は引っ込み、求めてた手に触れられ嬉しい以上の感情が込み上げてくる。

「ふむ。召喚に応じる事が出来なかった事に詫びよう」

何だかいつも横暴な王様に振り回されているせいか、素直に謝られると寒気がして不思議な感覚に襲われ、後から少しずつ笑いが零れた。

「貴様、人が素直に謝れば笑いおって!不敬にも程があるぞ!」

「やっぱり、ギルだ!」

いつものやり取りに微笑んでいると、ギルガメッシュは美月の手を取り再び前を歩き始めた。

「ぎ、ギル?」

「この入口から近い場所に長居は無用であろう?遊園地は我も初めてでな、凡俗共の娯楽施設など興味は無いのだが、我の金で買ってしまった以上無駄にする訳にもいかぬであろう…ええい貴様!ニヤけてないで案内せい!」

実はこういう遊園地が初めてだったりするギルガメッシュは、少しそわそわしている。時折頭上のジェットコースターからお客さんが幾度となく歓声を上げるものだから、気になって仕方が無い様子だったのだ。

ギルガメッシュに言われ、今度は美月から手を取り歩き出す。

「まず、ジェットコースターから乗ろうか…!」

「じぇっと?こーすたーとな、疾く向かうが良い」

気分が良いギルガメッシュを引き連れその場を離れると、販売券の方にマシュと敵の美月の姿が現れる。

「先輩、券買ってきました!ミラーパークって言う鏡を使ったアトラクションが魅力的らしいです!早く行きましょう先輩」

「ふふ、マシュは遊園地初めて…?」

その言葉にマシュは自分ばかり舞い上がっていたため慌てて、否定するように恥ずかしい顔を隠して少し俯く。

「はい、初めてです。例えレイシフトと言えど先輩とこうして遊園地を調べるという事が無ければ、サーヴァントの皆さんを連れて先輩と二人で楽しみたかったです」

その言葉に敵の美月は笑みを深め、マシュの手を取るとゲートを越えてミラーパークへと入って行った。



破鏡4
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