ジェットコースターに初めて乗り、ご満悦のギルガメッシュを横目に、安全バーを上げて立ち上がる。

「フハハ、凡俗共の遊びも楽しいではないか!」

「途中の鏡張りの所はちょっと、ホラーでしたけどね」

ギルガメッシュも安全バーを上げ降りると、ふと他のお客さんに目を向ける。その妙な視線に気づいた美月もお客さんに見ると、みんな笑顔で話したり笑い合ったりしているのに、どこかジェットコースターに乗る前のお客さんとは違う雰囲気がした。

「む?貴様も気づいたか、先程とは別の異なる人物に変わっているという事を…ここはそういう類の所か」

二人はどこか魂の抜けたお客さんを抜けて、フードコーナーの脇にあるベンチへと座る。

「そういう類って…?」

「簡単な事であろう?つまりこの何とかパークとやらは、鏡に微弱な陣(結界)を仕掛け魂を集め、仮の魂を空の身体に入れて動かしているのであろうな、無粋な奴め。周りは既に人形ばかりではないか」

気づけば、殆ど魂を取られて何処かさ迷う人ばかりになっていた。まるでこのテーマパークを楽しむ、という事だけに従い動いている感じに思う。

「この特異点にある目立つ建物と言えば、このパークの中心に立つミラーキャッスル。あの場所に行けば、何か手がかりがある…!」

ギルガメッシュの呼び止める声を無視して、美月は急いで走り去る。それはギルガメッシュの少し離れた所に敵の美月とマシュを見つけ、その二人に自分とギルガメッシュが親しげに話している所を見られたら、せっかく自分を本物だと見てくれているギルガメッシュに悪いと思ったからだ。

そんな一人でベンチに再び座るギルガメッシュに、マシュと敵の美月が気づき近づいてきた。

「王様先に来てたんだね、偽物は見つけてくれた?」

「ああ、見つけたが逃げられた」

「英雄王でも逃す敵が居るのですね…!」

その空返事に敵の美月がどこか違和感を抱いたのだろう。スッと手を差し出しギルガメッシュに令呪を見せる。

「せんぱ―「令呪を持って命ず、アーチャーギルガメッシュ、逃した私を殺してきて」

マシュが軽率に令呪を使用するマスターを止めようとしたが、それは少し遅かった。令呪は発動され、ギルガメッシュが眉間に皺を寄せる。

「貴様、この程度で我を動かせると「思ってない。だから…残りの令呪を持って命ず、逃した私を殺して?」

令呪により、ギルガメッシュの衣類は鎧に変わり尚も従わないギルガメッシュを見て、やれやれと肩を落としため息をつく敵の美月。

流石に状況が飲めないマシュは、ドクターに通信を試みるが電波は何者かに妨害されているようで繋がらない。

そんなマシュと距離を少し取り、令呪に尚も抗うギルガメッシュに耳打ちをする。

「王様はどうしても敵の私を倒したくなさそうですね?ワタシはきちんと此処に、本物が居るじゃないですか?」

「おのれ、貴様…何が目的だ」

「私は…仁志美月として生きるんです。ただそれだけです、あの子は消えるんです、どの道お城に向かった時点で…ふふふ」

フフッと敵の美月は笑うと、動かないギルガメッシュを見ると呪文を唱えカルデアへと還らせようとする。

流石にその頃にはマシュが気づき、美月の元へと近づいてきた。

「あの、先輩?この状況はいったい…?」

「うん?ああ…王様が令呪にどうしても従ってくれないみたいだから還らせようかな。って」

その何も思わない冷酷な瞳にマシュは少し、寒気を覚えてしまった。普段の美月とは何かが違うような。しかし、目の前に居る先輩は確かに先輩なのであると自分に言い聞かせ、その行為を止める事はしなかった。

「貴様がにせ―」

もの、と言われる前にギルガメッシュの姿は美月とマシュの姿から消えてしまった。

「あれ…先輩?英雄王何か言いかけていませんでしたか?」

「ん?ごめん、私聞いてなかった…とりあえず私達だけでも偽物追いかけよ?あのお城に向かったみたいだね」

そう言い、美月とマシュはミラーパークの中心部にある小さな洋風のお城へと足を運んだ。



破鏡5
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