ながれぼし
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十二国記パロ部屋
▽2019/03/14(20:24)
リアヤツリアもはや、四肢に力は入らない。目も霞む。焼けた匂いを感じることはない。先程まで聞こえていた潮騒が、ぱたりとやんだ。絶えず聞こえていた国民の鼓動も、もはや。
もう、何も残されていない。おそらく、ここで私は、私という国は終わるのだろう。考えてみれば、あの日、あの瞬間に終わるはずだった国だった。ここまで生きてこられたことに対し、感謝しなければならない。―兄さんさえ、生きていてくれれば、それでいいのだ。だから最後に漏れたのは呪いの言葉などではなく、笑顔だったのだろう。
頬を、生暖かい雨が滑り落ちる。それは夏特有の気だるい暑さを消すように、まるで私の罪さえも消すように。けれどよく考えてみたら、雨は1粒も空から落ちてきてはいなかった。それは、私の瞼から分泌されていたものだった。最後の力を振り絞り、瞼をこじ開ける。けれど、その瞳は、もう、何も写すことはなかった。鮮やかな色彩も分からず、敗北を受け入れた世界を見ることはできなかった。
(ほら、言った通りだろう)、と彼女の声が鼓膜を刺激した。そんな気がして、思わずもう一度瞼を開けようと力を込める。傷だらけで醜い瞳はもちろん彼女の姿をうつすことはしなかったけれど、頭の中ではかの国の姿がしっかり形成されていった。金糸の美しい髪が海風になびき、意志の強い眼が真っ直ぐ私をみつめる。宵闇で満たされた世界が、ほんの一瞬、色付いた。それは春をまちわびて開花する桜のような美しさを持っていた。
国として生きてきた長い年月、私の世界は兄さんや、周辺諸国の方々だけで成り立っていた。同じような宵闇だけで生きてきた私にとって、あの国の色は胸を強く刺激した。―遥か遠い欧州に存在する国は、とても美しかったのだ。自分たちとは決して交わらない文化があって、言葉があって、色があった。そしてそれは一種の憧れだったのかもしれない。兄が国を彼らに開かれた時、私もともに開かれた。黒しか無かった世界が、色とりどりに飾られていく。そこで見た全く違う彼らに、そして彼女に、手を伸ばしても届かないもどかしさを感じたのは恐らく私も同じであったのかもしれない。
(リアーヌさん、私は―)真っ直ぐみつめる視線に全てを暴かれそうで、いつも目を逸らしていた。己の醜い嫉妬心に似た感情を悟られたくなくて、微笑みに全てを隠していた。(あなたが、羨ましくて)国として生まれた我々が自我を持つだけでもおかしな話だが、それ以上に人としての性まで国によって異なることもおかしな話だ。私の人としての性は女で、あの方の性も女で。人であるならば女性は守られてこそ花、男を立てるべきもの。そう今まで解釈していた私は、彼女と出会い、世界がひっくり返った気がした。(あなたのようになりたくて)あの方は、あの国は、性が同じなだけで、私とはまるっきり何もかも違かったのだ。支援してもらわなければたちまち滅びてしまう私とは相対する国だと思った。(―あなたに、あこがれて)いつでも堂々と意見を言える姿が、率先して立ち向かっていくその姿が、私には、眩しすぎた。
つづくよ
ゆらめいて、むこう
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