11 -怪しげな企み-




このまま貴方の想いも


本物になっていけば良いのに――











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(side:亮子)














『白井梨華です。皆さんをサポート出来るように、しっかり頑張りたいと思います』



礼儀正しく挨拶をする白井さんは、思った通り部員のみんなに大好評。

私の計算は間違っていなかった。

今日は運良く大海彩愛が学校を休んでるみたいだし、手っ取り早く彼女を味方にしとかないとね。



「よろしくね、白井さん」

『牧原先輩。宜しくお願いします』



大海彩愛を懲らしめる為には、彼女の力がどうしても必要なの。

幸村くんは私に逆らえないし、彼女をマネージャーにするには簡単だった。

問題はこれからよね…。



『あの、どうして私をマネージャーに誘ったんですか…?』

「貴方は…切原くんと付き合ってるんでしょ?」

『そう、ですけど…』



やっぱり…。

私の情報網を舐めないでよね?

昨日の様子だと、切原くんは大海彩愛の事を好きなようだし。

この子も多少なりとも大海彩愛に憎しみを感じている筈。

だけど彼女は懲らしめるなんてことは出来ない、真っ直ぐな性格。

ほら、今だって私を警戒してる。

だから大海彩愛への憎しみを利用するんじゃなく、切原くんへの愛を利用すれば良いの。

とことん利用させて貰うわよ?



「でも、切原くんは彩愛ちゃんの事が好きなのよね?」

『なっ…、何でそれを…?』

「彩愛ちゃんから聞いたの」

『仲…良いんですか?』

「ええ、同じ部活にいるのよ?悪い筈が無いじゃない?」



なんて言えば、私が大海彩愛に嫌がらせをするとは考えにくくなる。

ましてや、大海彩愛が私の悪口をこの子に言う筈がないし、仲が良くない事をバラす筈もない。

そんな性格じゃないのはよく知ってる。

だからこそ、自分を苦しめる羽目になるのよねぇ。



「でも、彩愛ちゃんは切原くんの事は何とも思ってないみたい…」

『そう、なんです…。だからこそ私は…!』



そう言って唇を噛みしめる彼女に、私は心底感謝した。

憎しみを感じていなくとも、嫌悪感は抱いているようね。



「だから、私は白井さんに協力したいの」

『えっ…?』

「彩愛ちゃんが切原くんを好きなら話は別だけど、好きじゃないなら本当に切原くんを好きな白井さんを応援したいと思ってるの」

『牧原、先輩…』

「その方が、切原くんも幸せになれると思うしね」

『そう、ですよね…。私なら赤也くんを苦しませたりはしない…!』



そうそう、その意気よ。

貴方なら出来るわ。

私とタッグを組めば、この計画は必ず成功する。

高笑いしたい気持ちを抑えるのが大変だわ。



「仕事は勿論だけど、恋の方も頑張りましょうね」

『はい…!』



私は彼女にニッコリと笑いかけた。

落ちた…これで彼女の心はゲット。

何だか女を落としていくホストみたい。

気持ち良いわ――。





『あ、牧原先輩。その傷どうしたんですか?』



一緒にドリンクを作っている最中に、彼女が私の腕に付いている青痣に気付いた。

これは…使えるかもしれないわね。



「これは…ちょっと、ね…」



意味深に青痣を手で覆い隠す。



『何か…あったんですか?』

「誰にも、言わない…?」

『はい。絶対言いません!誓います』

「実は…彩愛ちゃんが…」

『大海さん…?』



分かり易く俯いて、悲しげな表情で話した。



「白井さんをマネージャーに推薦したって言ったら怒り出して…近くにあったラケットで…」

『ひっ、ひどい…』



なーんて、寝てる時にベッドでぶつけただけなんだけどね。

直球型だけあって感情移入し易いわね、この子。

操りやすい、簡単だわ。



『私、大海さんに直接言いに行きます!暴力なんて許せません!』

「えっ…」



ヤバイ、直球型であるが故に直で勝負する子なのね…。

止めなければ嘘ってバレるじゃない!



「待って、白井さん!良いの!」

『でも、先輩にそんな事するなんて同じ後輩として有り得ませんよ!』

「誰にも言わないって約束したじゃない!」

『い…言いました、けど…』

「私、部員のみんなに迷惑かけたくないの…」



ここは、部員に迷惑をかけたくない素晴らしいマネージャーを装って。

彼女の私に対する印象もアップさせるのよ。



「今、先輩達が引退して、大変な時じゃない?だから…マネージャーが問題を起こして、迷惑をかけたくないの」

『先輩…』

「私が彩愛ちゃんに嫌われてる事は知ってるの。彩愛ちゃんが男目的でマネージャーに入ったって事も…」

『大海さん…そんな人だったんだ…』

「私が我慢すれば全て収まる事なの。だから、白井さんも抑えて…?」

『ご、ごめんなさい…。私、すぐカッとなるタイプで…』

「ううん、良いの」



寧ろ、ありがとね?

こんな嘘に騙されてくれて。

貴方じゃなきゃきっと無理だったわ。



「あ、そうだ。梨華ちゃんって呼んで良いかしら?」

『はい!』

「なら私の事も亮子って呼んでね」

『じゃあ…亮子先輩、って呼びますね!』

「ええ。仲良くなれて、嬉しいわ」



彼女が私の腕の痣に偶然にも気付いてくれたおかげで、より親睦が深まった。

正直、ここまで仲良くなるなんて予想外だったけど…順調に物事が進んでるわ。



『大海さんにまた何かされたら、遠慮せずに私に言ってくださいね?』

「ありがとう、心強いわ」

『赤也くんも何でそんな人を好きなんだろう…』

「彼女は演技が上手いから、切原くんも見抜けないみたい」

『うーん…確かに、赤也くんは人を疑うような人じゃないですからね』

「そうね」



そして、貴方もね?

あんなくさい演技に騙されるなんて、相当よ。

まぁ、そっちの方が私にとっても都合が良い。

せいぜい私の為に頑張ってよね。


それで、幸村くんが…私のものになれば――

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