23 -恋の終わり-
ホントのホントはね、
私だって
仲間を失いたくなかった――。
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『なぁ、彩愛』
「…なに?」
『戻って来いよ』
「……」
さっき白井さんにも同じこと言われたけど。
グルですか、君たち。
『もう、テニス部は嫌いなのかよ?』
「……」
私は赤也の胸に頭を埋めながら、ただひたすら無言を貫き通した。
…嫌いじゃない。
テニス部も、みんなも。
ただ、もう自信が無いの。
また同じことを繰り返した時、それでも私はテニス部を好きと言えるか…自信が無いの。
『部長が戻って来いって言ったら、お前は戻ってくんのかよ?』
赤也がこんな質問をした。
愚問だよ、赤也。
だって精ちゃんがそんなこと…言うはずない。
「そうだね。そしたら、戻るかも…」
だから、そう答えた。
戻る気がないわけじゃない。
今でも、みんなが嫌いなわけでもない。
私が…臆病だから。
だから逃げるの。
――バッ…!
赤也がいきなり私から離れた。
「?」
私は驚いて、赤也の顔を見る。
赤也は焦った表情で、何処かを見ていた。
その視線を辿っていくと…
「白井、さん…」
白井さんが仁王立ちしていた。
ヤバイ…二度目は流石にヤバイ。
私は心の中で必死に弁解の言葉を考えていた。
『赤也くん』
白井さんは赤也を見つめながら近寄る。
赤也は何も悪くない…。
「白井さん…!ごめんなさい、赤也は悪くないの!!」
赤也の前に立ち、白井さんにそう訴えた。
しかしその言葉も虚しく、白井さんはどんどん赤也に近付いていく。
『白井、俺』
『
ごめんなさい!!』
『「――…
え?」』
いきなりの謝罪に驚きを隠せない私達。
ごめんなさいって…何が…?
『私、赤也くんのこと独占したくて、大海さんに取られたくなくて…それで、赤也くんのこと、苦しめてた』
『白井…』
『大海さんのこと、大嫌いだった…』
「………」
こうゆう時、私はどんな反応を示せば良いものか…。
好きと思われてないことは分かってたけど、目の前で大嫌いと告白されても…。
まぁ、彼女らしいと言えばそうなのかもしれないけど。
『なんで赤也くんがこんな人好きなのか、って思ってた』
こんな人で悪かったね。
確かに、赤也がなんで私のこと好きなのか分からないけど。
『でも、なんとなく分かった』
え、分かってもらえたの…?
是非私にもその理由教えて欲しいものだ。
『ごめんね、赤也くん』
そう言って白井さんは、赤也にキスをした。
オイオイ、こんなところでやめてくれよ。
てゆうか私の存在無視してない?
『――ハイ、終わり!』
白井さんは、ふわりと笑った。
『もう解放したから。私のことなんて気にせずに、大海さんにアタックすれば良いよ』
いや、それはそれで困る。
赤也のアタックを受けきれる自信ない。
『大海さん』
「あっ…ハイ!」
いきなりこっちを振り向いた白井さんにビックリした。
なんだ、私の存在忘れてなかったんだね…。
『さっき…丸井先輩が来たの、本当に偶然だから』
真剣な顔でそう言う白井さん。
分かってるよ。
と言うより、今のやりとりを見てて分かった。
私は、白井さんを信じて良いのかもしれない。
「白井さん。私も、アナタのこと大嫌いだった」
『…うん』
いきなり入ってきたのに、みんなから大人気で。
それでもって、私の場所を奪ってく。
そんな白井さんが羨ましくて、妬ましかった。
「でもね。今なら…好きになれるかもしれない」
そんな私の言葉に、白井さんは満面の笑みを見せる。
悔しいけど…可愛いな。
さすがは学年一の美少女だわ。
『じゃあ…お友達からで』
「からで、って何?」
『決まってるじゃない?お友達から…』
“大親友になるんだよ”
白井さんはそう言って私の手を取った。
そんな恥ずかしい言葉を、サラッと言えてしまう彼女は凄いと思った。
こうして白井さんの恋は終わり、
私達の友情が始まった。
こんな形予想もしてなかったけど、悪いもんじゃない。
そう思える私が居た――。