03 -守る意味-
大切なんだ。
君を守りたい、だから俺は――
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(side:幸村)
その日の彩愛は、いつもと違っていた。
何が違う…?
『あ、精ちゃん!』
「…あ」
そうか、前髪…下ろしてるんだ。
雰囲気が随分と違う。
普段は子供っぽいのに、何だか急に大人びたみたいだ。
「彩愛、前髪…」
『あ、分かった?精ちゃんに言われたから、ちょっと高校生っぽくセクシーにしてみました!』
「別に…俺はセクシーな人が好きとは言ってないけど」
『そうだけど、髪型ちゃんとしろって言われたからさ』
あ…そうか。
今まで彩愛から呆れる程に好き好き攻撃食らってたから、彩愛が俺の事を好きなのは当たり前だと思ってた。
彩愛は俺の好みに合わせるものだと思ってたけど…違うんだ。
そうだよな。
成長してるんだ、彩愛も。
もう、あの頃の彩愛じゃないんだ。
止まってるのは、俺だけだ――
『精市』
「蓮二。何かあったのかい?」
険しい表情で近付いて来る蓮二。
『彩愛の事なんだが…』
「彩愛?」
『どうも上級生から呼び出しを食らってるみたいだ』
「呼び出し、か…」
『ああ。一昨日の昼休み、彩愛は職員室に呼び出されたと言っていたが、その日の昼休みは俺もずっと職員室にいたからな。そんな嘘を吐くのは、恐らく上級生に呼び出されていたからだろう』
「そうか…」
『彩愛は隠したい様だったが、もう人物まで特定出来ている』
流石は蓮二だな。
俺もそこまでは気付けなかったよ。
まあ、その人物にあまり興味もないけど。
「で、誰なんだい?」
『お前と同じクラスの、牧原亮子だ』
「へぇ…」
『テニス部のファンクラブ会長と名乗っている』
「ファンクラブ…?」
『彼女達が勝手に作ってるみたいだが』
そんなの、許可した覚えは無いんだけどな。
ま、迷惑にさえならなければ良いけどね。
あと、彩愛に何もしなければ…。
って、もうしちゃってるんだったね。
「彼女達、何とかしといた方が良いな」
『ああ。だが…彩愛が何もされてないと言ってる以上、俺達は何も出来ない』
「今は様子見って事か」
『そう言う事だ』
もどかしいけど仕方ないな。
下手に介入して、彼女らの怒りの矛先が彩愛に向かったら危ない。
今はただ、彩愛を守る事だけを考えよう。
『精市、一つ聞きたい事がある』
「何だい?」
『お前は、彩愛の事を…好きなのか?』
蓮二があまりにも意外な事を聞いてくるから、少し驚いた。
そして俺の直感。
蓮二も彩愛の事が…。
「好きだよ」
『それは、妹として…か?それとも』
「さあね。どうだろう?」
『…そうか』
聞く意味なんて、ない癖にね。
分かってるんだろ?
俺が彩愛を異性として好きな事くらい…――
『幸村くん、お願いがあるの』
「牧原さん…だっけ?」
この人か…。
さっき蓮二が言っていたのは。
『幸村くんって…大海さんが大切なんでしょ?』
「…どう言う意味かな?」
『もう大海さんには手出しはしないであげる。だから…
私と付き合って?』