32 -謎の男の子-
傷付いて傷付いてボロボロだった。
そんな私の前に現れた
謎の男の子…――
Link.32 -謎の男の子-
(side:彩愛)
フラれた…。
と言っても、精ちゃんにフラれるのはこれで…何回目だっけ?
もう慣れてる。
この胸の痛みも…何度経験しただろう。
それでもやっぱり、今回のは強烈だったよ。
『痛っ…』
「あ…ごめんなさい…」
考え込みすぎて、誰かの足を踏んでしまったみたいだ。
よく見てみると、靴も左右逆に履いていた。
どーりでなんかキツイと思った…。
『あ、あれ…?彩愛、ちゃん…?』
「あ…あぁ、梨華ちゃん。ごめんね、足大丈夫だった?」
『う…うん、大丈夫だけど…彩愛ちゃんこそ大丈夫?なんか、顔が死んでるよ?』
どうやら私はそれほど酷い顔をしているようだ。
でも…なんか今どーでも良いや…。
『ウィーッス!』
『あっ!赤也くん、おはよう』
『おはよ………って、アレ?彩愛?』
「ん…?あ、赤也。おはよー…」
『お前…どうしたんだよ?ってか、靴反対だぜ?』
そう言って赤也は靴を履き替えさせてくれた。
何だか介護されるおばあちゃんになった気分だ。
ありがたや、ありがたや…。
『な、なんかあったのかよ…?また牧原先輩か?』
「牧原………」
『やっぱり俺が一番に考えるのは、彼女の事だから』
…牧原………せんぱ…い……かの…じ…ょ……
「うっ…うぅぅ…っく…うぇぇぇ……」
『えっ、彩愛ちゃん!?』
『おおおオイオイ…!ちょ、彩愛!あーもうっ、あっち行くぞ!』
もういやだぁ…
こんなに辛いなら、恋なんて…恋なんてぇぇ…
奇声を発しながら泣く私を、赤也が中庭まで引きずり込む。
梨華ちゃんは私の荷物を教室に持って行ってくれた。
『落ち着けって。とりあえず深呼吸しろ』
「ひっ…く……む…むりぃぃぃ……っく……」
『彩愛、牧原先輩に何かされたのか?』
「ち………ひっく…ちがっ………ち、がう……っく」
『じゃあ、一体どうしたんだよ?』
ヤバイ…
息が…苦しい…。
「せっ…せい…ちゃん…に……フラ、れ……た……」
『
はぁ!?なんで!?』
「……かのっ…じょ…の、ほう…が………だいじ、だって……」
呼吸はどんどん荒くなり、嗚咽から過呼吸に変わる。
「わかっ…て、た……のに……ね……」
『お、オイ!もう喋んな!』
頭がフラついてきた。
赤也の困った顔が、段々霞んで行く。
し…死ぬ……
『どうしたんだ?』
一瞬、蓮二先輩の顔が見えた。
そしてその次に私の視界に入ったのは、白い天井。
「…………」
やってしまった…。
私は、迷惑かけることしか出来ない生き物なんじゃないか…。
『あら、大海さん大丈夫?』
白いベッドから降り、白いカーテンを開けると、保健室の先生が出迎えてくれた。
『切原くんと柳くんが貴方を運んでくれたのよ』
「何となくは、覚えてます……」
酷く反省してます…ハイ…。
でもなんか、ちょっとスッキリしたよ。
『後でお礼を言っておきなさいね』
「はい………あの、もう大丈夫です」
『じゃあもう教室に戻っても良いわよ』
と言われたので、私は教室に戻ることにした。
ちょうどチャイムが鳴って、授業が終わった。
『彩愛ちゃん!大丈夫なの?』
「梨華ちゃん…ごめんね、迷惑かけた。もう大丈夫だよ」
『ううん、私こそ何も出来なくてごめん』
「そ」
『
大海さん!!』
“そんな事ないよ”と言う私の台詞を遮ったのは、男の子の声だった。
聞き覚えのない声…。
私はその子に呼び出された。
「あ、あの………何か?」
『いや、その…突然ごめんね。どうしても伝えたい事があって…』
伝えたい事?
そもそもこの子は誰?
牧原先輩の手下?
疑問はたくさんあったけど、とりあえず黙っておくことにした。
『あの…オレ、大海さんの事が、好きなんだ!』
「
はっ?」
予想外の告白に、私の頭は思考停止した。
と思うと、今度は勢い良く動き出す。
何…何なの?
何処で私を見たの?
私とこの子の接点は?
私の何処が好きなの?
てゆうかまず
名乗れぇぇえええ!!!
「い…いや、私は…その、好きな人が…居る、のね」
もう終わっちゃった恋、だけど。
そんなすぐに切り替えは…。
『知ってるよ、幸村先輩でしょ』