34 -最後の告白-
笑った顔、怒った顔
呆れた顔、困ってる顔
貴方のひとつひとつの表情に
私はいつも恋をする――
Link.34 -最後の告白-
『知ってるよ』
精ちゃんは静かにそう言った。
平然とそう答えられて悔しかったけど、精ちゃんの目が何だか悲しそうに見えて…言い返すことが出来なかった。
『昔から彩愛は、俺の言う通りに生きてきたよね』
「…うん」
『でも、それじゃいけない。分かるだろ？』
「……うん」
精ちゃんが何を言いたいか分かるよ。
“俺から離れて、自立しろ”ってことでしょ？
全部…分かってるよ――
「精ちゃん、私は…精ちゃんの事が大好きで大好きで…精ちゃん以外見えて無かった。……でもね、それはもう過去にする」
『…うん、それが良いよ』
「今まで…ありがとう」
私は手を差し出した。
泣きそうになったけど、必死に堪えて精ちゃんを見る。
精ちゃんは…
優しく微笑んだ。
『こちらこそ。好きになってくれて、ありがとう』
そう言って私の手を握る。
あーもう…最後の最後まで、精ちゃんカッコイイよ…。
『あ、言い忘れてたけど…』
「？」
『その髪型、似合ってる。やっと大人っぽくなったな、彩愛も』
今度はニッコリ笑う精ちゃん。
胸の辺りがきゅーっとした。
「…狡いよ、精ちゃん…」
堪えてた涙が、一気に溢れ出す。
嬉しいけど、悲しい言葉。
最後にそんなこと、言わないでよ…。
「我慢してたのに……」
一体精ちゃんのことで、私は何回泣いただろう？
流れても流れても、涙は枯れない。
「精ちゃん、最後にひとつだけ良い？」
『…良いよ、何だい？』
「抱き締めて…」
私の要望に、多分精ちゃんは困ってた。
顔を見なくても分かる…幼馴染み、だもん。
だけど、精ちゃんは…
優しく私を抱き締めてくれた。
「ありがと…」
好き…。
もう、精ちゃん以外好きじゃないよ…。
好きになれる自信が無い――。
『大海さん！？』
最近何処かで聞いた声が、後ろから聞こえた。
振り向くと…
「田中、くん…」
私の、恋人だ。
いきなり現実に戻された気分。
もう…最悪…。
『じゃあ、彩愛。俺は部室に戻るから』
精ちゃんはそう言って、部室の方に去って行った。
残されたのは、険悪なムードだけ。
『…何やってるの？』
「いや…お別れを…」
『お別れ？ここは外国じゃないんだぜ？何で抱き合う必要があるんだよ？』
なんか面倒な事になったな…。
どうしよう。
と、言いながらも、少し冷静な自分がいた。
「田中くん…私、こんな気持ちで田中くんと付き合ってて良いのかな？」
『だから、すぐには忘れなくて良いって。でも、ハグしたりするのはさすがに許せない』
「…ごめん」
すごい窮屈…。
やっぱり、こんな気持ちで付き合ったのは間違いだった。
『さ。帰ろ？部活終わるまで待ってたんだぜ？』
強引に手を引っ張られ、半ば強制的に連れて行かれる。
なんか…一方的だな…。
『てかさ、何の話してたの？』
これはもしや別れられるチャンスかも、と。
私は正直に話した。
「田中くんと別れろって言われた」
『…はぁ！？』
田中くんは、私の手を強く握り締めた。
少し痛かったけど、そんな事を言える雰囲気では無かった。
『なんであの人にそんなこと言われなきゃなんないワケ！？』
「いや、その…忠告って…」
『意味わかんねぇよ！！あの人、大海さんのこと好きなんじゃねぇの！？』
「そ、それはないよ…フラれてるし…」
『じゃあ！！そんなのに従うことねーよ！！！』
「で…でも……」
田中くんはお冠の様子だ。
無駄なこと言っちゃったかな…。
『もうあんな奴とは二度と喋るな！！！』
この言葉に、私の中の何かが切れた。
「あんな奴って…誰に向かって言ってるのよ！！！！」
広いコートに、私の声が響き渡った。
スッキリしたのか…ふと、我に返った。
「あ、あ…いや…あんな奴はないんじゃない？さすがに先輩だし…」
『…………』
田中くんは無言で私の手を引っ張る。
色んな事が…めんどくさい。
付き合うって、こんな事なのかなぁ…。
「！…あ、赤也…」
部室の前で、バッタリ赤也と対面してしまった。
右手は田中くんの手と繋がっている。
私は勢い良く、その手を離した…。
笑った顔、怒った顔
呆れた顔、困ってる顔
貴方のひとつひとつの表情に
私はいつも恋をする――
Link.34 -最後の告白-
『知ってるよ』
精ちゃんは静かにそう言った。
平然とそう答えられて悔しかったけど、精ちゃんの目が何だか悲しそうに見えて…言い返すことが出来なかった。
『昔から彩愛は、俺の言う通りに生きてきたよね』
「…うん」
『でも、それじゃいけない。分かるだろ？』
「……うん」
精ちゃんが何を言いたいか分かるよ。
“俺から離れて、自立しろ”ってことでしょ？
全部…分かってるよ――
「精ちゃん、私は…精ちゃんの事が大好きで大好きで…精ちゃん以外見えて無かった。……でもね、それはもう過去にする」
『…うん、それが良いよ』
「今まで…ありがとう」
私は手を差し出した。
泣きそうになったけど、必死に堪えて精ちゃんを見る。
精ちゃんは…
優しく微笑んだ。
『こちらこそ。好きになってくれて、ありがとう』
そう言って私の手を握る。
あーもう…最後の最後まで、精ちゃんカッコイイよ…。
『あ、言い忘れてたけど…』
「？」
『その髪型、似合ってる。やっと大人っぽくなったな、彩愛も』
今度はニッコリ笑う精ちゃん。
胸の辺りがきゅーっとした。
「…狡いよ、精ちゃん…」
堪えてた涙が、一気に溢れ出す。
嬉しいけど、悲しい言葉。
最後にそんなこと、言わないでよ…。
「我慢してたのに……」
一体精ちゃんのことで、私は何回泣いただろう？
流れても流れても、涙は枯れない。
「精ちゃん、最後にひとつだけ良い？」
『…良いよ、何だい？』
「抱き締めて…」
私の要望に、多分精ちゃんは困ってた。
顔を見なくても分かる…幼馴染み、だもん。
だけど、精ちゃんは…
優しく私を抱き締めてくれた。
「ありがと…」
好き…。
もう、精ちゃん以外好きじゃないよ…。
好きになれる自信が無い――。
『大海さん！？』
最近何処かで聞いた声が、後ろから聞こえた。
振り向くと…
「田中、くん…」
私の、恋人だ。
いきなり現実に戻された気分。
もう…最悪…。
『じゃあ、彩愛。俺は部室に戻るから』
精ちゃんはそう言って、部室の方に去って行った。
残されたのは、険悪なムードだけ。
『…何やってるの？』
「いや…お別れを…」
『お別れ？ここは外国じゃないんだぜ？何で抱き合う必要があるんだよ？』
なんか面倒な事になったな…。
どうしよう。
と、言いながらも、少し冷静な自分がいた。
「田中くん…私、こんな気持ちで田中くんと付き合ってて良いのかな？」
『だから、すぐには忘れなくて良いって。でも、ハグしたりするのはさすがに許せない』
「…ごめん」
すごい窮屈…。
やっぱり、こんな気持ちで付き合ったのは間違いだった。
『さ。帰ろ？部活終わるまで待ってたんだぜ？』
強引に手を引っ張られ、半ば強制的に連れて行かれる。
なんか…一方的だな…。
『てかさ、何の話してたの？』
これはもしや別れられるチャンスかも、と。
私は正直に話した。
「田中くんと別れろって言われた」
『…はぁ！？』
田中くんは、私の手を強く握り締めた。
少し痛かったけど、そんな事を言える雰囲気では無かった。
『なんであの人にそんなこと言われなきゃなんないワケ！？』
「いや、その…忠告って…」
『意味わかんねぇよ！！あの人、大海さんのこと好きなんじゃねぇの！？』
「そ、それはないよ…フラれてるし…」
『じゃあ！！そんなのに従うことねーよ！！！』
「で…でも……」
田中くんはお冠の様子だ。
無駄なこと言っちゃったかな…。
『もうあんな奴とは二度と喋るな！！！』
この言葉に、私の中の何かが切れた。
「あんな奴って…誰に向かって言ってるのよ！！！！」
広いコートに、私の声が響き渡った。
スッキリしたのか…ふと、我に返った。
「あ、あ…いや…あんな奴はないんじゃない？さすがに先輩だし…」
『…………』
田中くんは無言で私の手を引っ張る。
色んな事が…めんどくさい。
付き合うって、こんな事なのかなぁ…。
「！…あ、赤也…」
部室の前で、バッタリ赤也と対面してしまった。
右手は田中くんの手と繋がっている。
私は勢い良く、その手を離した…。
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