37 -偽りの終幕-
一度諦めた恋。
一度目は駄目だった。
でも、二度目なら…――
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“話があります。部活が終わったら、テニス部の部室の前に来てください”
と、田中くんにメールを送った。
田中くんに別れを告げる、そう決めたのだ。
『あら。彩愛ちゃん、おはよう。新しい彼とはどう?』
携帯を閉じた瞬間、いつも通りの嫌味な声が聞こえてきた。
「牧原先輩…」
相変わらず情報が早い。
この人、どんだけ暇なの?
「別に、何もないです」
余り関わりたくないので、早々に牧原先輩から離れた。
「白井さん、これ洗っておいたから」
『あっ…ハイ…』
牧原先輩に、私と梨華ちゃんの関係を悟られないように、部活中はそんなに多くは喋れない。
常によそよそしい状態。
やりにくいけど、雅治先輩と蓮二先輩の計画を無視するわけにはいかないからね。
『テメェの持ってきたタオルなんて使うわけねぇだろ』
『なんで部活に戻って来たんだよ?さっさと失せろ』
部員から浴びせられる暴言も、日常茶飯事。
持って行ったタオルを部室に戻す。
毎日そんな往復の作業をしてる。
「ハァ…」
私…何の為にこんなに頑張ってるんだろう。
急に溢れそうになった涙を、グッと堪えた。
『彩愛ちゃん、このドリンクお願いね』
牧原先輩に頼まれたので、またもやコートに向かう。
受け取って貰える筈もなく、また部室に戻る。
それを、牧原先輩か梨華ちゃんがもう一度持って行く。
それの繰り返しだ。
最初から二人のどっちかが持って行けば良いのに、牧原先輩はそれをさせない。
私が部員に嫌われているのを見るのが楽しいんだろう。
もういい加減、疲れた…。
毎日繰り返されるこの光景に、私の心は限界まで達していた――。
『あ、居た』
もう人の姿もあまり見えない、部活後。
田中くんが部室の前にやってきた。
『何?話って』
本人の顔を見ると、言葉が出てこなくなった。
けど…勇気を振り絞って言った。
「別れよう」
最初からこうなることは分かってたのに。
私が…弱虫だったから。
田中くんを、色んな人を巻き込んでしまった。
『なんで?』
暗くてハッキリと顔は見えないけど、機嫌の良い声ではない。
怒ってるかな…やっぱり…。
「田中くんを…異性として見れない。ゴメン…」
まともに田中くんを見れなかった。
罪悪感が押し寄せる。
『どうしても?』
「……うん」
『そっか…』
と、田中くんは俯いた。
凄く気まずい雰囲気。
「本当にごめんね…。それじゃあ…」
この場に居るのが辛くなって、無理矢理去ろうとした。
でも…
『待てよ』
力強く、田中くんに腕を掴まれた。
『別れてやっても良いぜ。ただし…――』
「
キャァッ…!!」
部室の中に連れ込まれ、鍵を掛ける。
そして、私は勢い良く押し倒された。
怖い…怖い…ッ…。
「田中くん、何を…」
『1回くらいはヤらせろよな』
「…ッ!」
『本気でお前さんのことが好きなんて、思っとるワケないじゃろ?エッチがしたいだけじゃ』
やっぱり…雅治先輩の言ってた通り、だったの…?
『オラ、抵抗すんなよ。一応彼女なんだしなぁ?』
「ち、違っ…」
いつもの田中くんとはまるで違う荒い口調。
必死で抵抗するものの、恐怖で力が出なかった。
「や……やめ…て…」
自然と涙がこぼれ落ちた。
後悔の念が、私の頭の中でぐるぐると回る。
『知ってるか?泣き顔って、一番そそるんだぜ?』
「…ッ」
一瞬、背中に悪寒が走った。
でも、そんな事なんて関係なしに、田中くんは私のブラウスを引きちぎる。
プチプチッと、音を立ててボタンが散らばった。
「や、だ…助けて…
誰か!!」
『
静かにしろ!』
「――ッ…」
無理矢理キスで口を塞がれる。
その瞬間、何だか力が抜けた。
もう誰にも助けを求められない。
だって、私に仲間なんて…――
ガチャッ