50 -報われない愛-
愛してます。
きっと、世界中の誰よりも…
貴方を愛してる――
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(side:彩愛)
『…彩愛。俺も…好きだよ』
「え…?」
『ずっと、大好きだった…――』
精ちゃん…。
私はもう、精ちゃんを想う資格なんてない。
好きなのに、大好きなのに…
どうして、報われないんだろうね?
「…っ…く…」
涙が止まらない。
こんなんじゃダメなのに…。
今だけ…
今だけだから…後悔させて。
『幸村くんは貴方の為に苦しんだ。貴方は、幸村くんの為に苦しむことが出来るのかしら?』
「………」
精ちゃんは…私の為に…。
ごめんね、精ちゃん。
ありがとう――
『いらっしゃい』
インターホンを鳴らすと、すぐに男の人が出てきた。
いやらしい目…。
その目が、私に現実をぶつけてるようで。
急に恐怖が込み上げた。
『良いねえ、初々しい。君はきっと人気が出るよ』
肩に手を回されて、体中に力が入った。
気持ち悪い…
でも、この程度で反応してたらダメだ…。
これからもっと凄いことが…
初めては大好きな人とって、決めてるんだから!
そう思っていたのが、随分前のように感じる。
「
…ッ!?」
『もしかして君、経験無いの?』
いきなりベッドに押し倒される。
まさか…ここで…?
『まぁ、確かめれば分かるけどね』
「…ッ…!」
スカートのホックを外された。
恐怖と…孤独…。
自然と涙が溢れ出た。
『あらら、泣いちゃった?ホント初々しいね〜。…そそるよ』
「や、だ…ッ…」
我慢出来ずに、抵抗してしまう。
覚悟を決めた筈なのに…。
『やだじゃないでしょー。こうなること分かってここに来たくせに』
両手をベッドに押し付けられる。
首筋にキスを落とされた。
想像以上の不快さに、力が抜ける。
抵抗することの許されないこの空間に、全てを諦めた。
「……さよなら…」
精ちゃん…
みんな…――
そっと目を閉じた。
―ピンポーン―
その時、インターホンが鳴った。
『…誰だ?』
男は玄関へ向かうために、私から離れる。
安堵…それだけしかなかった。
ダメだな、私…。
強がって…背伸びして…ホントは助けて欲しいのに、無理して…。
「……っく…………たす…けて…」
助けてよ、誰か…。
助けて……
『なんだ、お前達は…!!』
『
彩愛…!!』
「―――…え」
精ちゃん…
精、ちゃん…
「
精ちゃん…ッ…!!」
思い掛けず現れた精ちゃんに抱き付いた。
…いや、飛び付いた、と言った方が正解かもしれない。
『彩愛…』
「精ちゃん…精ちゃん………つ!」
『
彩愛…!』
精ちゃんの真っ直ぐな目が、私に向いた。
『……セーフ、だよね?』
ボタンと言うボタンが外され、ほぼ下着姿に近い私の体。
精ちゃんが少し疑った顔をしているのも無理はない。
でも…
「
……うん…ッ!」
下着姿だとかは、もはやどうでも良かった。
とにかく恐怖から解放された安堵が、どっと押し寄せた。
『おいおい。そいつはうちの商品だ、返しなさい』
『ほらよ』
バンッ、と…お金が鳴った。
と言うより、お札が鳴った。
それくらい分厚いお札たちが…床に放り投げられた。
『なっ…』
「景ちゃん…」
『お前が牧原に出した3倍の金を出す。これで取り引きしねぇか?』
『さ…3倍…』
心配して、来てくれたんだ…。
精ちゃん、景ちゃん、蓮二先輩……ありがとう。