03 運命の出会い
新居に着いた私は、取り敢えず荷物を置いて外へ出る。
知らない土地で、好奇心旺盛な子供のようにはしゃぐ私。
もっと周りを知りたくなって、フラフラと歩き出した。
(Act.03 運命の出会い)
海のような景色が見えてきて、小走りでそっちに向かう。
道端にテニスボールがたくさん落ちていたので立ち止まったその時、
――パコォォオオン!
「…っ、
痛ったー!」
頭に鈍い痛みが走った。
殴られたかと思って振り向いてみても誰も居ない。
側に落ちているのはテニスボール。
『あいー!やっちまったさぁ』
いきなり登場したその男の子は、見とれてしまう程の綺麗な金髪で。
私は傷みも忘れてその男の子を見ていた。
『気絶してるばー?』
「あっ…」
話しかけられてようやく我に返る私。
『良かった、取りあえず生きてたか』
「
一瞬クラッとしたけどね」
『あい?やー、どっかで見たことあるやっさー』
「え?そう?」
『あー…思い出せない』
「気のせいじゃない?私、君みたいな人見たことないもん」
見たことあるなら、きっと覚えてるよ。
こんな印象強い人滅多に居ないし。
「それよりさ、テニスやってるの?」
『おぅ、一応元テニス部さー』
「元?」
『もう引退したから』
「あ、そうなんだ。私も今年引退したの」
『なら同い年やっし』
「うん。まぁそんなことだから、一緒に打とうよ!」
『は…何でわんが「
良いから!私ストレス溜まってるの!」
私は無理矢理その男の子の手を引っ張る。
『ちょ、待…コートは学校にしかないさぁー』
「なら学校まで行こうよ」
『…やー、結構強引なんだな』
「だって打ちたいんだもんっ」
『わぁーったわぁーった。連れてってやるから、ボール拾うの手伝え』
「やったーv」
私は下に落ちているボールを拾い上げる。
ごめんね、打ちたいなんて口実かもしれない。
本当は知らない土地で一人になった事が怖くて友達が欲しかったのと…
初めて会った君に、今までに無い魅力を感じたから――。
『へぇ。やるもんだな』
「私も一応テニス部だったからね」
『でも、まだまだ甘いさー』
「
うっわ、手加減無しですか!」
『当たり前やっし!』
何でだろうね?
初めて会った男の子に、
不安も蟠りも何もかも
消されてしまうなんて――。
『やーは何処の中学校だばぁ?』
「え?わかんない」
『ぬーやが、ソレは。本土の人間か?』
「本土?…まぁ、そうだけど。でも今日からは此処の人間」
『此処の人間?』
「そ、私今日引っ越してきたの。ヨロシク」
私は手を差し出す。
彼は微笑して私の手を取る。
この時…
私の後ろで悪魔が微笑んでいた事に気付くのは
『なら比嘉中に来るかもな』
「比嘉中?…ッ、比嘉中って…まさか…」
そんなに先のことでは無かった。
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