05 ときめきの理由


[side:楓]



さて、どうした事でしょう?



「起きて、凛」



明日の朝、早く起きて俺の家に来いって言いましたよね?


なのに…



「起きてってば、ねぇ」



それなのに…



起きろォォオ!!平古場凛!!

あがーっ!











(Act.05 ときめきの理由)











お前が寝ててどうする。


何度揺すっても起きない彼に、私は得意(?)の跳び蹴りをプレゼント。

そして笑顔で一言、






「おはよう」







…――



『やー、もうちょっと起こし方を考えろよ』

「ゴメン、遅刻しそうだったから」

『だからって、アレはないやっしー…』

「じゃあ今度から早起きしてよね」

…このまま置いていこうかな

ごめんなさい、私が悪うございました



私がそう言うと、ハハッと笑う凜。


不覚にも…その笑顔がカッコイイと思ってしまった――。







『「おはようございます…」』



罰が悪そうに担任の前に立つ私達。

実は私達、2時間も遅刻してしまいました。



『玉城さん、初日から遅刻は厳禁だなぁ』

「すみません、以後気を付けます」

『平古場くんも風紀委員なんだからさぁ、気を付けてよ』

『すみません、以後気を付けます』



パクりかよ。

てゆーか君風紀委員だったのね。



『じゃあ、平古場くんは教室に戻って』

『はーい』

『玉城さんは…もう今日は良いよ』

へ?

『明日は遅刻しないで来ること』

「は、はい…」



そんなノリで良いんですか?

私達2時間も遅刻したんですよ?



前の学校なら怠学決定だよ。



『「失礼しましたー」』



私達は声を揃え、職員室から出て行った。

何もなくて良かったけど…



あーあ、凜のせいだ。初っぱなから最悪

『楓が悪いんさぁ。わんに平手打ちなんて食らわすから』



2時間遅刻は流石に駄目だろ。

デートだったら彼女怒って帰っちゃうよ。



「凜なら躱せると思ってたんだもん」

『躱したらお前が転びそうだったからよー』

「えっ…?」



だからわざと殴られたの?

私を…守ってくれたの?

畜生、この色男めが。



『ちょーっと肉付いてるって言っただけなのにさー』

「それがレディに対して失礼だって言ってんの」

『わったーに比べたら女なんてそうゆうもんだろ』

アンタらと比べるなよ

『だからって、平手打ちなんて酷いさぁ』



2時間も遅れた理由…それは、凜が落とし物をしたからなんです。

ちょっとじゃれ合ってたら凜が何かを落としたみたいで。

というか私が吹っ飛ばしたみたいで。

大切な物だったらしいし、しかもそれが私のせいとなれば、私だけ先に行くなんて薄情な事は出来なくて。

そしたら二人仲良く遅刻v

初っぱなからイメージ最悪ですね、私。



「それより、何探してたの?」

『…指輪』

「指輪なんて付けるんだ、君」

『年頃だからな。それくらい付けるさー?』

「ふーん。見つかって良かったね」

『おう』


そう言って凜は無邪気な笑顔を私に向けた。







――ドキッ…。





「…ん?」

『あい?』





ドキッて何だ?私。

今変な効果音が体内で響きましたが?



「…いやいやいやいやいや」

『ど、どうしたんばぁ?』



私が凜にときめいたって言うの?

アハハハハハハ、…絶対に無いから。

だって出会って二日だよ?

私は一目惚れなんて絶対にしない。

この鼓動の意味が恋だなんて…絶対に認めない。



――…恋?




「無い無い無い無い、私に限ってそんな事」

『…………』



これはきっと一種の病気。

うん、きっとそう。



「病院行こうかな」

精神科をお勧めするさぁ



今まで一度だって、異性にときめく事なんて無かったのに。

恋なんてした事なかったし。

何人かとは付き合ってきたけど、"好き"なんて感情は生まれなかった。

これからもずっと、私は恋なんてしない。

そう信じてる。


いや…そう信じていたいんだ。

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