第11話 みんな同じだってわけか。
<ブン太side>
優衣子が立海を去って一週間。
ずっと気に掛かる事があった。
#mtr11#
(第二章〜もう会う事はないと思っていた〜)
優衣子が転校する前に、俺は病院で確かに優衣子を見た。
最初は見間違いかと思った。
けど、アレは間違いなく優衣子…。
声を掛けるにも人違いだったら困るから、とりあえず後を付けた。
『おばさん。私…亜美の願い、叶える』
よく見えないけど…優衣子、だよな?
でも亜美って…?
『…え?』
『私が、復讐する』
…今、なんつった?復讐?
『ふ、復讐…ですって…?』
『そう。だから、私氷帝テニス部のマネージャーになる』
嘘、だよな?
アレは優衣子じゃねえよ。
優衣子が復讐だなんて…まさか…。
しかし次の日に聞いた事実は、それを確信に変えた。
「優衣子!お前転校するってマジかよ!?」
違うっつって欲しかった。
昨日のあの言葉は聞き間違いだって思いたかった。
だけど優衣子の口から出た言葉は、俺の願いを…叶えてはくれなかった。
『うん』
頭の中が真っ白になった。
俺が見たもの聞いたものは…全部間違いなんかじゃなかったんだ。
「…元気でな」
そんな月並みな言葉しか言えなかった。
お前を止める事だって出来たかもしれねえのに…。
『…うん』
悲しそうに俯いた優衣子に、何も言えなかった。
俺は見す見す…お前を間違った方向に見送っちまったんだ。
今ならきっと、お前を全力で止めるのに…――
『――…丸井!』
「え、あぁっ…!!」
『何してんだよ!』
「……ッ、悪い」
クソッ、部活にも集中出来ねえ…。
俺はどうすれば良いんだ?
優衣子は今、何をしてるんだよ…?
『丸井、ちょっと』
部活終了後、幸村君に呼び出された。
何を告げられるんだろうか。
レギュラー降格?
それとも部活を辞めろ?
何を言われても仕方がないと思ってた。
『君は一体、何を気に掛けているんだい?』
「…えっ…」
しかし幸村君の口から出た言葉はコレだった。
幸村君にはきっと一生敵わない。
隠してても無駄、なんだろうな…。
そう思った俺は全てを幸村君に話した。
『そうか。実は俺も気になっていた』
「………」
『…俺もだ』
「えっ、…柳…!」
『昨日まで笑っとった奴が、いきなり辞めるなんて可笑しいぜよ』
「なっ!仁王まで…」
『フフッ、丸井?気にしているのは君だけじゃないようだよ』
『うむ。俺も、何かあると思っていた』
『優衣子さんが理由もなく、辞める筈がないと思っていました』
『にしても復讐ね。流石優衣子先輩』
『凄いな、優衣子の考える事は…』
真田…柳生に、赤也に…ジャッカルまで…。
みんな、俺と同じ気持ちだったのか?
『でも丸井、それを言うにはちょっと遅すぎたね』
「悪りぃ…。言って良いのか悪いのかわかんなかったから」
『復讐なんて知っていたら…全力で止めたのだが』
それは俺も同じだぜ、真田。
例え優衣子を殴ってでも止めていた。
だって大切なお前に復讐なんて…させたくないだろい?
『だから優衣子は俺達に言わなかったんだろうね』
「え…?」
『優衣子の決意は大きなものだったから、誰にも止められたくなかったんだよ』
「………」
幸村君は、何もかも分かっている。
本当に幸村君に隠し事なんてしても無意味だ。
『噂で聞いた事だから定かではないのだが…』
柳がそっと口を開いた。
『優衣子は今、虐めを受けているらしい』
「…はあ?」
優衣子が…虐め?
あの明るくて元気な優衣子が虐められるなんて考えられねえ!
つーかアイツが虐めなんかに耐えられる筈ねえだろ!?
優衣子を虐める奴は、俺が許さねえぜ!!
『クスッ、もしそれが本当なら…
許せないね』
ゆ、幸村君…、黒いオーラが飛んでるぜ?
ただ幸村君の気持ちは痛切に伝わってくる。
『そんな奴ら…
殺しんしゃい』
仁王、自分見失ってるって…。
殺すのはマズいだろい、殺すのは。
『ソイツ等潰しに行きましょうよ』
『氷帝だろ?俺は負ける気しねえぜ』
『そうですね。優衣子さんを虐めるなんて最低な人達です』
『随分と時間の無駄遣いをしているんだな、氷帝は。…たるんどる』
みんな…。
優衣子を好きな気持ちは、みんな同じだってわけか。
『それぞれ思う事はあるだろうが、まぁ待て。俺に良い考えがある』
『ほう、やっぱり参謀は頼もしいのう』
『俺とて優衣子が大切だ。その噂を聞いた時から、色々と考えた』
『んで、何なんッスか!?』
俺達は全員で柳を囲んで、柳の話に聞き入った。
そして最後に柳が一言。
『
計画の実施は一週間後だ』
なんだかやけに気合いが入った。
――見てろよ氷帝。
優衣子を虐めたこと、後悔させてやるからな!
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