第14話 もっと苦しんで貰わなきゃ。
<愛理said>
合同合宿だなんて、楽しそう。
榊監督がいない。
1ヶ月間…姫島優衣子は逃げられない。
正に最高の条件が揃ってるじゃない。
立海の皆さんにも、私のオモチャになって貰いましょうか?
そして、私達と一緒に…姫島優衣子を地獄に落とすゲームでもしましょうよ――?
『愛理!また傷…増えてる…』
「…別に…何でもないの…」
本当に何でもないよ?
だって自分で作った傷だから。
自分の大切な体に、傷跡なんて残せるわけないじゃん。
『まさか姫島優衣子に?』
「えっ…あ…違う、よ…」
わざとらしく否定してみる。
これだと姫島優衣子にやられたって言ってるようなものだよね〜。
今一人、姫島優衣子を憎む人が増えた。
そして…私のオモチャになる人もね――
『姫島優衣子、ちょっと来てくれるかしら?』
あら、早速姫島優衣子をお呼び出ししてる。
賢いオモチャだね、やっちゃえ。
『忙しいから無理』
あーあ、馬鹿じゃないの?
そんなこと言うからみんなの反感買っちゃうんじゃん。
ま、私にはそっちの方が好都合だけどね。
『アンタに選択権なんてないのよ、来なさい!』
あ、連れてかれちゃった。
精々楽しんでね、私のオモチャとのお遊びを――
「姫島さんっ…どうしたの?その傷」
『別に』
最高、その無惨な面。
私のオモチャ達…やってくれたね〜。
『愛理、そいつに関わらん方がええ』
「…侑士…」
『そいつ、裏の奴等と関わっててヤバイって聞いたで』
「姫島さんが…?そんな…」
そんな噂が流れてたんだ〜。
ならもう誰も信用しないよね、アンタなんか。
氷帝にはお金持ちがたくさんいるの。
そんなヤバイ人と、関わるわけないじゃない。
私も小南財閥の娘として、そんな人と関わって信用失うの嫌だから…離れるわね、バイバイ。
「嘘、だよね…?」
『どうでも良いわ』
「…姫島さん…そんな…」
ハハッ、バーカ。
アンタなら絶対そう言うと思った。
恨むなら自分の性格を恨みなさい。
「…姫島さんが、怖い…」
『だから、もうアイツとは関わらんとき』
「……でも…」
一回目は否定しなきゃね。
そんな簡単に人を裏切れない純粋な子を演じなきゃ。
『ええから、俺の言う通りにしとき』
「………ん…」
そして二度目で渋々オッケー。
本当は裏切りたくなんかなかったのに…。
って思ってる可哀想な女の子。
侑士の目にはちゃんとそう映ってる?
「姫島さん?そろそろ弱音吐いたら?」
『別に、何とも思わない』
「ふーん。可哀想な子だね、アンタ。その性格が自分を苦しめてるんだ〜」
『貴方より可哀想な子はいないわね』
いちいちカンに障る奴だな、この女。
もっとどん底に突き落としてあげようか…?
「ソレ、貸して」
『仕事の邪魔しないで』
「良いから、貸しなさい!」
私は姫島優衣子から無理矢理ドリンクを奪い取る。
今から私がする事、アンタにわかる?
――バシャッ。
私はドリンクをぶっかけた。
勿論、自分自身にね。
確かもうすぐ休憩に入る時間だよね。
「
嫌っ!!やめて姫島さん!!!」
――ガチャ。
ほうら、扉が開いた。
『なっ…!?どうしたんや、愛理!』
『ビショ濡れじゃねえか!』
「侑、士…岳人…。侑士の言う通りにしたら、姫島さんが怒って…っ」
『おい、姫島。お前いい加減にしろや』
『いい加減にして欲しいのはこっちだわ。人が折角作ったドリンクを無駄にしないで欲しいわね』
『ふざけんな!テメェが愛理の作ったドリンクを無駄にしたんだろ!?』
『見てて笑えるわね、貴方達』
『なんやと?』
『亜美が何故この男達を信用していたか、理解出来ないわ』
この女、何処までも清水亜美なんだね。
この人達の中で清水亜美は私を虐めた最悪な女。
そして氷帝のみんなに仕返しを受けて自殺した、ただの馬鹿な女でしかないの。
誰も清水亜美なんて信用しなかったし、アンタも信用されてないんだよ?
それぐらい気付きなよ、アンタの方が見てて笑える。
『亜美は、小南愛理に虐められていたと言うのに』
『はあ!?何言ってんだよ、愛理が清水亜美に虐められてたんだよ!』
『ま、そう思ってれば良いわ。今は』
今は…?ハッ、何言ってるの?
気付く筈ないじゃない。
私の芝居は完璧、バレる事はないわ。
そう、一生ね――
本当はアンタなんか、お父様の力で今すぐ消せる。
でも…もっと苦しんで貰わなきゃ。
もっともっと、泣き叫んで謝罪するのよ。
この私に。
そうすれば許してあげる。
だけどもしもアンタが、私に反抗するのならば…
それなりの制裁は受けさせなきゃね。
アンタの大事な
清水亜美のように――
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