第16話 「私の名前、知ってる?」


<優衣子said>



『いよいよ明日からやな、合宿』

『ああ、楽しみだぜ!』



遠くの方で忍足侑士と向日岳人が話している。


明日、か。

どうしても気分が乗らない。

みんなに…会いたい。

けど、今の状態で会いたくはない。

しかもコイツ等が一緒だなんて。

合宿の間、私はどれだけみんなに引かれる事をするんだろう?


大切なものを…また失ってしまうの…?



『姫島さん。跡部君が新しいボールを倉庫まで取りに来いって』

「なんで私が。アンタが行けば?」

『駄目だよ〜、姫島優衣子って名指しで言ってたもん』

「………」



私を倉庫に呼ぶなんて、怪しすぎる。

何を企んでいるんだか。


私は携帯電話を取り出し、電話を掛ける。



『はい、藤堂です』

「藤堂?お願いがあるんだけど…――」






そして電話を切り、言われた通りに私は倉庫へ行く。

倉庫は薄暗くて静まり返っていた。

私は倉庫に入り、辺りを見渡すが、誰かが居る気配はない。

帰ろうかと思い振り向いたその時



『よう、姫島さーん』

『やっぱ可愛いねえ…アンタ』



男5、6人が倉庫に入ってきた。

なるほど…こうゆう事か。



『アンタ、虐められてるんだって?可哀想に、俺が慰めてやろうか?』

「跡部景吾が呼んでるって聞いたけど」

『跡部さん?ハハッ、騙されたんだよアンタ。愛理に』

「…ふーん」

『随分クールだねえ。もうちょっと怖がってくれないとつまらねえぜ』

「貴方達如きに怖がれなんて、無理な話ね」

『テメェ…!』

『もう良い、やっちまえ』



そう言って私の両腕両足をしっかり固定する男達。

そしてネクタイを取り、ブラウスのボタンをひとつずつ外していく。



『そんなん破っちまえよ』

『馬鹿野郎、こんな奴はジワジワいたぶるのが良いんだよ』



なんて言っているが、ジワジワでもスピーディでもどっちでも良い。

とにかくその気持ち悪い面を止めて欲しい。



『足開かせろ』

『オッケー』



私は無理矢理足を開かされる。

端から見れば説明しなくても犯されていると分かる状況。

大分淫らな格好をしていると自分自身で分かる。



『なあ、お前何か言ったら?』

「何を言えば良いのかしら?」

『もうちょっと抵抗してくれねえと、俺らもムラムラしねえんだよ』

「しなくても私は困らない」

『…チッ、まぁ良い。お前ルックスだけは良いからな』

『そうそう、コイツとヤレるだけでもラッキーじゃねえか』

『早くしろよ!後がつっかえてんだから』

『まぁそう焦んなって』



口々に物を言う男達に苛立ちを覚える。

そしてブラウスのボタンは全て外された。

男の手がスカートの中に侵入してくる。


気持ち悪い…。














――ガガガガガッ…




その時、倉庫のドアが静かに開いた。


…やっと来た。




『オイ、お前鍵閉めたのかよ!?』

『ちゃんと閉めたって!』

『じゃあ何で…!?』

『知らねえよ!…ッ!!』

『…お、おい!ヤバイんじゃねえの!?』



倉庫に入って来たのは図体のデカい外国人10人程。

そりゃ驚くよね。

この人達は私が呼んでおいたボディーガード達。

物凄く…強いよ?



「…離して」

『あぁ!?』

「その汚い手を、離せって言ってるの」

『何だと?』

「痛い目に遭いたいの?」

『…わ、わかったよ』



両手両足が自由になった私は、ボディーガード達のもとへ行く。

そして微笑み合う。



『…わ、悪かった…!俺達愛理に頼まれて仕方なく…!』



今更焦っても遅いんだよ?

貴方達は、小南愛理の味方をした。

私の大嫌いな小南愛理の味方を、ね。



「…そこの貴方?私の名前、知ってる?」



一人の男を指差して、質問する。



『な、名前?姫島…優衣子、だろ…?』

「ピンポン、大正解」



そりゃ私は学校中で嫌われているもんね?

知らない方がおかしいか。

でも、私の名前が知られてるのは…この学校だけじゃなくてよ?



『名前が何だっつーんだよ?』

「氷帝のお坊ちゃまならご存知無いかしら?」

『ま、待てよ…!姫島って…まさか…姫島財閥の…』

『嘘だろ!?そんな人にこんな事したら…俺…』

「さて、どうなるかしら?」



私は不敵に笑う。

全て貴方達が悪いんだよ?



『頼む、助けて下さい!』

「…そうね、助けてあげる」

『本当ですか!?』

「だから、これ以上小南愛理に手を貸さないで貰える?」

『分かりました!』

「あと、テニス部には私の正体は言わない事。勿論、小南愛理にもね」

『ハイ!約束します!』

「なら、今回だけ見逃してあげるわ」



そう言って私はボディーガードと共に倉庫から出て行った。

そして再び携帯電話を取り出す。



「藤堂、ボディーガードが助けてくれた。ありがとう」



ボディーガードを派遣してくれた藤堂に報告をする。

予め呼んでおいて良かった。

もうすぐで私の体は汚れるところだった。



「私…復讐に地位も名誉も関係ないと思ってた」



だってこれは心の問題。

お金が絡む様な事ではないでしょう?



「でもね、跡部財閥やら小南財閥やら…アイツ等は何かと言うとお金や地位で解決しようとしてくる」



貴方達が権力を武器に立ち向かってくるのならば、こっちだってそれなりの武器を使わせて貰うね。





後悔、しないでよね?

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